【米:オピニオン全翻訳】共和党リズ・チェイニー下院議員：歴史は私たちを監視している

By Mariko Kabashima 2021/05/11

米共和党の下院議員でNO3のポストにあるリズ・チェイニー氏のオピニオンを紹介します。
同議員は、トランプ前大統領を批判し、共和党の下院ナンバー３のポストから追われる見通しとなりました。
チェイニー氏は、「わが国の自由と民主的プロセスを支持し保護するという基本原則を守る勇気がなければなりません」と主張しています。
私は、同氏のこの意見が通らないどころか、同氏を追放する動きを示している共和党は民主主義を放棄しているようにみえてしかたありませんし、非常にがっかりしています。

チェイニー氏のこのオピニオンは素晴らしい主張です。もしかしたら歴史に残る米共和党の分岐点になるかもしれません。
ちなみに同氏は、ディック・チェイニー副大統領とセカンドレディリン・チェイニーの長女です。

ぜひ御覧ください。

《引用記事　ワシントンポスト：2021/05/06》

Opinion by Liz CheneyMay 6, 2021 at 6:05 a.m. GMT+9

リズ・チェイニー:共和党は転換期を迎えています。歴史は私たちを監視しています。

共和党員のリズ・チェイニーは、米下院のワイオミング特別区全国選挙区の議会議員を務めています。

今週の再びの公式声明で、前大統領のドナルド・トランプは、2020年の選挙は不正であり、選挙は盗まれたという主張を繰り返しています。
彼のメッセージは次のとおりです。：
「私はまだ正当な大統領であり、バイデン大統領は非合法な存在です」
トランプ氏は、このような言葉が1月6日に暴力を引き起こしたことを十分にわかった上で、このような言葉を繰り返しています。そして、司法省や複数の連邦判事が示唆しているように、トランプ大統領の言葉が再び暴力を誘発する可能性があると信じるに足る十分な理由があります。トランプ大統領は、民主主義を機能させる憲法構造の重要な要素——選挙の結果と法の支配に対する信頼——を崩そうとしています。アメリカの大統領でこんなことをした人はひとりもいません。

共和党は転換期を迎えており、私たちが真実と憲法の忠誠を選ぶかどうかを共和党は決定しなければなりません。1月6日の暴力事件の直後、私たちのほぼ全員が、今起きたことの重大さと原因を知っていました。私たちはそれを直接目撃しましたから。

共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務 (カリフォルニア州) の公の発言をみても疑いの余地がありません。1月13日の下院で、マッカーシーは「トランプ大統領は水曜日の暴徒による議会への攻撃に責任があります。大統領は、何が起こっているかを見たとき、すぐに暴徒を非難すべきでした」と述べました。マッカーシーは自身の主張を変えました。

私は保守派の共和党員ですが、保守的な価値観の中で最も保守的なのは、法の支配に対する敬意です。私たち一人ひとりが、憲法を守ることを神の前で宣誓しているのです。選挙人団が述べています。トランプが任命した複数の判事を含む60以上の州裁判所、連邦裁判所は、前大統領の主張を退け、選挙結果を覆すことを拒否しました。それが法の支配であり、それが不正選挙の訴えを解決するための憲法上のシステムなのです。

今、私たちに問われているのは、私たちが2020年の選挙の法的結果の合法性を認めず、選挙結果を取り消すためのトランプの十字軍に参加するかどうかであり、それがもたらすあらゆる結果を考慮しなければならないことです。私は外国で仕事をしたことがありますが、その国では指導者の交代は暴力のみで行われ、民主主義でいられるのは次の暴力的な激変が起きるまででした。アメリカが非常に優れているのは、そのようなことが起こらないように憲法が守られているからです。我が共和国の根本に、法律に従って政敵の間で平和的に権力を移行するというコミットメントがあります。ロナルド・レーガン大統領は、これを「アメリカの奇跡」と表現しました。

トランプの発言を容認したり、見て見ぬふりをしたりすることは、資金調達や政治的目的のためには魅力的に見えるかもしれませんが、そのアプローチは、我が党と我が国に深刻な長期的ダメージを与えることになります。トランプは、1月6日に起きた事件に対する反省や後悔の念を示したことは一度もなく、今では選挙や法・憲法のシステムが国民の意思を反映するために信頼できないと示唆しています。

これは計り知れないほど有害です。特に、わが国が世界の舞台で、共産主義の中国、そして民主主義は失敗した制度であると主張する中国と競争している現在においてはなおさらです。

共和党にとって、進むべき道は明らかです。

第一に、1月6日の攻撃について現在進行中の司法省の犯罪捜査を支持すること。これらの調査は包括的かつ客観的でなければならず、ホワイトハウスも議会議員も干渉すべきではありません。

第二に、並行して、私たちは事実の追求と発見のための召喚権を持つ委員会による超党派の調査を支持しなければなりません。つまり、すべてのアメリカ人のために何が起きたかを説明することです。これは、マスコミやソーシャルメディアに流れている誤った情報やナンセンスな情報を払しょくするために重要です。次の選挙期間を見据えて、現在現役の議員は参加すべきではありません。私たちは、2001年9月11日のテロ攻撃の後と同じように、元高官や司法関係者、その他の客観的な立場にある著名な米国人を任命すべきであり、委員会は1月6日のテロ攻撃に焦点を当てるべきです。昨年の夏のブラック・ライブス・マター（Black Lives Matter）やアンティファ（Antifa）の暴力は違法で非難されるものでしたが、それは別の問題であり、別の解決策が必要です。

最後に、私たち共和党員は、純粋に保守的な原則を支持し、危険で反民主的なトランプの個人崇拝から離れる必要があります。私たちの心の中で、私たちはアメリカの奇跡に貢献しています。私たちは、法の支配、立憲政治、強力な国防、低い税金と財政的に保守的な政策がもたらす繁栄と機会を信じています。

現在、我々の政治的ライバルの馬鹿げた奇策、国境での不合理な政策、1970年代の壊滅的なインフレへの回帰の恐れのある無駄遣いといえる支出など、多くの問題があります。

レーガン大統領は、アメリカを正常な状態に戻すために、政治的スペクトラムを超えた幅広い連合を結成しました、そして、私たちは今、同じことをする必要があります。方法はわかっています。しかし、もし共和党が法の支配を放棄し、わが国の民主主義の基盤を弱体化させ、前回の選挙の法的結果を覆すためにトランプの十字軍に加わることを選択したなら、これは実現しません。

歴史は見ています。子供たちが見ています。私たちは、わが国の自由と民主的プロセスを支持し保護するという基本原則を守る勇気がなければなりません。私は、短期的な政治的影響がどうであろうと、それを実行することを約束します。

(海外ニュース翻訳情報局　樺島万里子　翻訳・文）