【元米軍海兵隊士官・提言】安全保障関係を弱体化させる慰安婦問題

こちらのサイトでは既におなじみになった、元米軍海兵隊士官グラント・ニューシャム氏の最新の寄稿です。つい昨日、韓国が2015年の慰安婦問題に関する日韓合意の再検証を行い、大いに物議をかもしているところですが、この記事ではその問題に触れています。記事の中盤、保守的な日本人にとっては違和感を持つ描写が登場します(私も訳していて反論したくなりました)。ただ、ニューシャム氏ほどの日本通をもってしても、これが海外から見た慰安婦問題なのかと改めて考えさせられます。
Post 2018/01/11  06:32

【ASIA TIMES by By GRANT NEWSHAM   2018/01/09】

政府による(再度の)謝罪と880万ドルの賠償金の拠出をもって、日本は2015年、韓国との間の「慰安婦」問題に関して最終的な決着をつけたと思った。だが、それは迂闊な考えだった。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、この合意には欠陥があり、(何かは特定されていない)変更が必要であると言明した。最近の報道では、彼は合意を破棄するつもりはない一方、この件が解決したとも考えていないとされている。

日本人はいつものごとくいら立っており、アメリカ人も然りだろう。アメリカは、韓国人が思う存分鬱憤を晴らせば、いずれ日本人にもっと優しいまなざしを向けるのではないかと期待している。その後、(実際の同盟ではなくとも)真の日米韓3か国間協力が実現するだろうと。

しかし、核武装した北朝鮮との戦争の可能性と、北東アジアの支配をたくらむ強引な中国の存在を考慮すると、そのように寛大な日韓関係の長期的な展望は、厄介で危険なものとなりつつある。

日本にとってさらなる頭痛の種となっているのは、韓国人市民団体が慰安婦像を在ソウル日本大使館と在プサン日本領事館の前に設置したことだ。慰安婦像と記念碑は、ロサンゼルス、サンフランシスコ、またアメリカのその他の地域にも設置されている。

結構なことだ。しかし、20世紀にはたくさんの不幸があり、韓国人だけが苦しんでいたわけではない。イギリスの極東戦争捕虜協会は、第二次世界大戦中に日本の捕虜キャンプで韓国人看守が行った残虐行為を記念するイギリス人捕虜の像を在ロンドン韓国大使館前に設置すればいい。捕虜の報告によると、自分たちを捕虜にした日本人よりも残酷だったとして「韓国人」のことが頻繁に特記されている。これは決してささいな話ではない。

そして、韓国政府が日本帝国軍に属していた韓国人兵士の代わりに100万ドルを慰安婦基金に寄付するというのはいかがなものか。その韓国人兵士たち自身がおそらく慰安婦のサービスを受けていたというのに。

ハノイの韓国大使館前にも、1960年代のベトナムにおける韓国兵による市民の虐待や殺人(特に1968年のビンタイにおける大虐殺)を記念した碑を建てる場所が空いている。捕虜となった戦闘員に対する残虐な扱いはベトナムにおいては公然の秘密だ。捕虜を適正に扱っているかどうかを確認しようとしたあるアメリカ軍士官に対し、韓国海軍兵はこう伝えた「ここには捕虜なんていねえよ」。

そのとおり、慰安婦問題に関しては、日本側も自己弁護を怠ってきた。日本がはっきりと謝罪し状況を改善しようとしてきた一方、一部の日本の支配階級は高慢な無関心さを装い続けてきたように思われている。日本の役人の無防備な発言や、日本人はいかなる悪事にも関与していないという長年にわたる頑なな拒絶は特筆される。

「彼女らは全員、自ら志願してきたか、あるいは売春婦だった」から、慰安婦組織に日本軍が関与した証拠はないなどという些細なこだわりまで(あたかもそれが、いかなる虐待の理由にもなるかのように)、日本側の言い訳は様々だ。終戦間際に日本軍が有罪の証拠となる書類を焼却したとしても、まだ数々の証拠は見つかる。現代の日本の娯楽産業を見てみればいい。詐欺、強制、そして暴力が見受けられる。ちょうど慰安所で行われていたように。

アメリカ政府はこの論争に関わらない一方(理由がないわけではない)、一部のアメリカの政治家や活動家は激しく日本を非難する。ただ、自分たちだけが正義だと主張することは、いささか微妙な問題だ。なぜなら、アメリカ人と連合軍もまた、占領下の日本において「慰安婦」組織に似たものを利用したからだ。そしてその組織もまた、志願者だけで構成されていたわけではなかった。

占領下の日本は、人々が餓死寸前、もしくは実際に餓死していた世界だ。海外特派員リチャード・ヒューズは占領下の東京を「若い女性にとってのきちんとした職がとても不足している好ましくない都市」と描写した。そのとおり、彼女らは強制され続けていた。

予想に違わず、中国は韓国や話を聞いてくれそうな相手なら誰でもそそのかし、日本の悪行の証拠となるいかなる話題も、誇張して広めている。

厚かましさに相当する中国語に疑いの余地はない。中華人民共和国は天安門広場の毛沢東の肖像を孫文に替え、毛沢東による5000万人の犠牲者の像を建てればよい。平和な時代に、好天の下で犠牲になった人たちの。

これらの話のポイントは何か? 単に、自己正当化や怨恨は外交政策の土台としては頼りない、ということだ。

人々は過去を忘れることはできないし、また忘れるべきでもない。しかし、もし怨恨が国家の外交方針にとってそれほど有益ならば、ディズニーランドではなくバルカン半島が世界で一番幸せな場所になっているだろう。

文大統領は両方の側からアプローチしようとしている。日本との「未来志向の」協力を呼びかけながら、一方では慰安婦問題で日本を激しく攻撃している。日本はもうそれに慣れてしまって、それほど強く抗議し返さない。彼らはただ、怒りを自分たちの腹に収めてしまっているだけだ。

しかし、文氏はアメリカにも同様に二方向からアプローチしようとしている。それはリスクが大きい。日本に対する獰猛さは、彼自身をアメリカ国民と共に薄氷の上に立たせるようなものだ。もしくは、アメリカ政府や軍にいる韓国の友人たちと共に。

アメリカ人は長年にわたって韓国人に日本人と協力するよう促してきた。これまで大した成功は見られないが。ただそれには現実的な理由がある。真の日米韓軍事同盟は北東アジアの防衛と戦争抑止に大いに貢献するからだ。

韓国の振る舞いは究極的にはアメリカの(そして韓国と日本の)国家防衛力を弱体化させることになる。これは政治的な問題だ。アメリカ政府が韓国に対し、反日の恨みにふけるのを止めるよう促していることは理にかなっている。アメリカはかつて韓国の独立をもたらし、引き続きその責務を負っている(北朝鮮と中国に対抗して)。そして、いずれまた再びそうせざるを得なくなるかもしれない。

トランプ氏が文大統領にこう言うのを聞きたいものだ「ああ、わかったよ。ただ、もし君が自分たちのためにアメリカ人に死んでほしいと望むのなら、もしくはソウルを守るためにサンフランシスコを犠牲にしてほしいと望むのなら、我々にも君にやってもらいたいことがある。我々は君達を愛しているし、これは君達が選択することだ。両方を望めると思うな、どちらかを選べ」

執筆者 : グラント・ニューシャム
日本戦略研究フォーラムの上席研究員であり、元米国海兵隊士官。米外交官、ビジネスエグゼクティブ、米国海兵隊員として日本とアジアで20年以上の経験をもつ。

(海外ニュース翻訳情報局 浅岡 寧)

この記事が気に入ったらシェアをお願いします。