【2019年ダボス会議:必読】全文翻訳:2019年世界経済フォーラム・ジョージ・ソロス氏講演

2019年1月22日から25日まで開かれている世界経済フォーラム、ダボス会議でのジョージ・ソロス氏の講演を全文翻訳紹介します。
昨年も当サイトでは、ダボス会議でのソロス氏の講演を全文翻訳紹介しました。
今年のダボス会議でのソロス氏の講演のテーマは、開かれた社会を脅かす脅威についてですが、主に中国について痛烈に批判しています。
ソロス氏については、賛否両論ありますが、同氏が主催するオープン・ソサエティ財団は、人道的に良いことも沢山しています。
南アフリカのアパルトヘイトを解放し、ソ連の共産党からの解放に取り組み、1986年には、中国の民主化を促進するため中国ファンドをつくりました。
残念ながら、当時の中国民主化については失敗し天安門事件につながり、同氏の「開かれた社会」に理解を示した中国人たちは、記録に「黒点」がついてしまったそうです。
世界中の記事をみていると、全ての事象には、プラスとマイナスがあり、その見る角度でプラスとマイナスが変わるということを感じます。
同氏についてもそうではないでしょうか。
ソロス氏の貴重な講演ですので、ぜひ、プラスの気づきにして下さい。
全6ページあります。

*追加情報 :その他のソロス氏の記事は、当サイト内検索でご覧になれます。

Post by Mariko Kabashima  2019/01/27  14:22

George Soros  2019/01/24  】動画についてはこちら

世界経済フォーラムでの講演  

こんばんは。お集りいただきありがとうございます。

今夜の私の時間では、開かれた社会の存続そのものを脅かす未曾有の危険について世界に警告したいと思います。昨年、私が、この場で皆さんの前に立ったとき、大半の時間をIT独占企業による不正な役割の分析に費やしました。

私は、その時このように述べました。「権威主義国家と大規模データの豊富なIT独占企業との間には、初期段階の企業監視システムと、すでに発展途上にある国家主導の監視システムを統合する連携が生まれつつある。その結果、ジョージ・オーウェルでさえ想像できなかったような全体主義的な支配が網の目のように広がるかもしれない」と。

今夜私は、機械学習と人工知能が抑圧的な政権の手に渡ることができるという統制の手段から、開かれた社会が直面している致命的な危険性について注意を喚起したいと思います。私が注目しているのは、習近平氏が一党独裁を望んでいる中国です。

昨年から、沢山のことが起き、全体主義的支配が中国でどのような形をとるかについて多くのことを学びました。

急速に拡大する個人情報はすべて、一元化されたデータベースに統合され、「社会的信用制度」が構築されています。そのデータに基づいて、国民はアルゴリズムによって評価され、それが一党独裁国家に脅威をもたらすかどうかを判断されます。 そして、国民はそれ相応の扱いを受けることとなります。

社会的信用制度はまだ完全に機能しているわけではありませんが、どこに向かっているのかは明確です。それは、歴史上他に類を見ない方法で、個人の運命を一党独裁国家の利益に従属させます。

私は社会的信用制度がぞっとする忌まわしいものだと感じます。 残念なことに、一部の中国人は、現在のところ利用できない情報やサービスを提供し、善良な市民を国家の敵から保護することができるので、むしろ魅力的だと感じています。

中国は世界で唯一の権威主義体制ではありませんが、間違いなく機械学習と人工知能の分野で最も豊かで、最も強く、最も発展した国です。そのため、習近平は開かれた社会という概念を信じる人々にとって最も危険な敵となっています。しかし、習氏だけではありません。権威主義体制は世界中に拡散しており、成功すれば全体主義体制になるでしょう。

私は、「オープン・ソサエティ(開かれた社会)財団」 の設立者として、目的が手段を正当化するという誤った主張をする、全体主義的過激主義のイデオロギーと戦うことに人生を捧げてきました。自由を求める人々の切望は永遠に抑制されることはできないと信じています。しかし、私はまた開かれた社会が、現在非常に危険にさらされているということを認識しています。

私が特に懸念しているのは、人工知能によって開発された統制手段が、開かれた社会よりも権威主義体制に固有の利点を与えているということです。彼らにとって、統制手段が、有用なツールを提供します。つまり、開かれた社会にとっては、それらは致命的な脅威をもたらします。

私は、一人の個人による支配ではなく、国家の役割が人権と個人の自由を守ることであり、法の支配が行き渡っている社会の略語として「開かれた社会*」という言葉を使っています。私の個人的な見解ですが、開かれた社会は、差別や社会的排除に苦しむ人々や、自分を守ることができない人々に特別な注意を払うべきです。

訳注 :開かれた社会*・・・C.R.ポッパーが『開かれた社会とその敵』で用いた言葉。 H.ベルグソンが『道徳と宗教の二源泉』において用いた閉じた社会に対する開いた社会の概念を修正したもの。ベルグソンは理念的であったのに対し,ポッパーは現実に即して論じている。「自由社会」と同義語で使われることも多いが,厳密にはすべてが批判に対して開かれている社会をさす。すなわち,何らかの立場のドグマ化を許さず,批判的議論によって知識と社会の発展が非暴力的な改善によってなしとげられる社会である。 (ブリタニカ国際大百科事典)

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