【太平洋 :海洋資源の脅威】マリアナ海溝に侵入する中国

当サイトでは太平洋の島国に接近する中国の動きを何度か取り上げていますが、パシフィックアイランドタイムズ紙に掲載されたこの記事は、世界最深のマリアナ海溝での中国の資源採掘の目論見について触れています。しかし、中国が思うようにふるまえるミクロネシア連邦とは違い、マリアナ海溝はアメリカ領であるグアムやマリアナ諸島が属する海域にあります。今後アメリカがこの中国の動きをどう牽制するか、注目しておきましょう。
この記事は、パシフィックアイランドタイムズ紙から紹介します。

Post 2018/02/13  16:34

Pacific Island Times By Mar-Vic Cagurangan  2018/02/13】

またひとつ、地域の安全保障を不安定にさせかねない領土拡張主義の印が垣間見えた。中国は2020年までに11キロメートルもの深海への潜航が可能な二隻の有人深海潜水艇を開発し、マリアナ海溝を調査する計画を立てている。

マリタイム・エグゼクティブ誌の1月号に掲載された記事によると、2012年6月のマリアナ海溝で水深7,062メートルに達する試験潜航を記録した中国の有人深海潜水艇 蛟龍(Jiao Long)は、今年正式に稼働を開始するという。

「中国は、深海調査と採掘のためのハイテク機器の開発も計画している」と、マリタイム・エグゼクティブ誌は続ける。

中国国土資源部によると、中国は過去5年以上にわたり、86,000平方キロメートルに及ぶ外洋での海底採掘を進めてきた。

サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、中国の科学者が昨年マリアナ海溝において、その最深部となるチャレンジャー海淵で人工的な地震波による層序データを世界で最初に回収した国として、二つの世界記録を更新したと伝えた。同紙はまた、中国科学院が開発した水中グライダー海翼(Hai Yi)が水深6,329メートルの記録を打ち立てたことも伝えた。

2012年、映画監督で深海探検家のジェームズ・キャメロンは、探検旅行の一環で、チャレンジャー海淵の最深部、約10,898メートルに到達した。

マリタイム・エグゼクティブ誌によると、中国の科学者はヤップ海溝の7,884メートルの深部でクサウオを捕獲したと伝えられており、これが中国における深海での魚介捕獲記録となっている。

昨年香港で開催された海中科学会議において、中国科学院深海科学工程研究所チーフアドバイザー 劉心成(Liu Xincheng)は、中国はエネルギー資源のほとんどを外国からの輸入に頼っているため、科学研究よりもむしろ天然資源を発見するための技術の開発に重きを置いていると語った。

科学的に重大な発見のためには、蛟龍はさらに深くまで行かなければならないと、彼は付け加えた。

「深海探索に使われる機器に必要な技術は、耐圧性が必要なため、宇宙向けのものよりもさらに高度なものが要求されます。指の爪ほどのサイズに700キロの重圧がかかるのですから」と、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙が劉のコメントを紹介した。

潜水艦隊演習に必要な深海データの収集を加速する中国の最新の行動は、アメリカ海軍に南シナ海での巡視計画を承認したとされるドナルド・トランプ大統領の動きに重なる。

先週、アメリカ海軍は、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦デューイ(DDG105)とスタレット(DDG104)が、インド太平洋地区で計画されている作戦に従事するために、母港のサンディエゴ海軍基地を出発したと発表した。

デューイとスタレットはアメリカ太平洋艦隊の武装強化ESG(遠征打撃軍)構想を推進するため、ワスプ遠征打撃軍の展開を援護する予定。現在日本の佐世保に配備されているワスプは、武装強化ESG構想の主力となる統合打撃戦闘機F-35Bが搭載可能だ。

「デューイの乗組員はいかなる任務をもこなす準備ができており、その覚悟もあります」とは、デューイの司令官アンソニー・L・ウェーバー中佐の言。「私たちは次の展開を終えて、家族の元に戻ることを楽しみにしています」

デューイやスタレットのような洋上艦は、水陸両用軍の第一目的である沿岸部における対地攻撃、特に戦闘中の攻撃能力を高めることができる。デューイとスタレットは、水陸両用軍を防衛するために不可欠な、海中・海上・空中の敵を発見し、無力化することのできる探知機と武器を搭載している。

グアムと北マリアナ諸島付近に位置するマリアナ海溝は、2009年にアメリカの国定史跡に指定された。当初、保護区域の撤回を提案された27の国定史跡に含まれていたマリアナ海溝国定史跡は、最終的にその撤回提案から外された。

しかし、ここはトランプの「アメリカファースト海外エネルギー戦略」の下で探求される可能性のある5つの地域のひとつにもなっている。石油輸入の外国への依存度を減らすために自国のエネルギー備蓄を解除しようとするトランプの計画の一環として、その戦略は原油と天然ガス資源を採掘できる可能性のあるアメリカの領海を数百万エーカーにまで広げることになる。

マリアナ海溝の海底には、次世代エネルギー源であるメタンハイドレートが眠っている。科学者によれば、そこは微生物が光エネルギーと炭素分子を化学エネルギーに変換することのできる数少ない地域のひとつだという。

(海外ニュース翻訳情報局 加茂 史康)

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