【キッシンジャー激白】:北朝鮮に「先制攻撃で対処したいという衝動は強い」

元国務長官であるヘンリー・キッシンジャー氏が1月25日、米上院軍事委員会の公聴会で北朝鮮情勢の核開発問題について発言した内容を、PJ Mediaが報道しています。北朝鮮への圧力が不発に終わった場合、アジアの核拡散が進展する可能性について言及しています。本記事は、PJ Mediaから詳細紹介します。

Post 2018/02/02  17:40

PJ MEDIA BY KARL HERCHENROEDER   2018/02/01】

ワシントン — ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は先週、トランプ大統領が北朝鮮に向けて放った攻撃的な発言に同意すると述べる一方で、議会に対して、国際社会の支持抜きにロシアと中国の国境付近で軍事介入すべきでないとくぎを刺した。

トランプ政権は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルのための核開発を実現するなら、レッドラインを超えることになると示唆してきた。だが議員と軍事専門家の中には、北朝鮮がすでにその線を越えてしまっている、あるいは少なくとも、ミサイルに核弾頭を搭載する寸前にまで来ていると主張する者もいる。

キッシンジャー氏は差し迫る「分岐点」についての考えを示した。米政権が、北朝鮮に対する先制の軍事行動か、益々厳しい制裁を検討する分岐点のことだ。

ニクソン政権の元国務長官は、上院軍事委員会のメンバーに次のように述べた。「我々はその分岐点に到達するだろう。また、先制攻撃で対処したいという衝動は強いものであり、その意見は理にかなっている。だが私は、政権幹部による公式の声明を全く目にしていない。

しかしいずれにしても、私個人の考えだが、アメリカが中国とロシアの国境で一方的な戦争を行うことには大きな懸念を抱いている。というのは、世界の大部分から、あるいは少なくともアジア全体から支持を受けていないからだ」

またキッシンジャー氏は、韓国が朝鮮半島で自国のみが核兵器を持たない状況を受け入れることはないと考えており、現在の北朝鮮の動向はアジア全体での核拡散へとつながる可能性があると述べている。日本もそれに倣うだろうと同氏は語った。

キッシンジャー氏はこう述べた。「すると我々は新しい世界に住むことになるということだ。そこでは十分な指揮系統を持ち技術的能力のある国々が、相当に意見の相違のある地域の中で核兵器を所有しているのだ」

また、「それは新しい世界であるので、我々は考えを新たにする必要があるだろう」と述べた。

キッシンジャー氏は、現在の戦略では一つの潜在的な核の脅威しか想定しておらず、このことで米国の核抑止の姿勢を全体的に再考せざるを得なくなると語った。同氏は、北朝鮮という一つの小国がそのような極度の脅威をもたらすのではなく、この状況の中にこれまで世界になかったような核をめぐる情勢へと発展する可能性が、内在しているのだと述べた。

今後数週間のうちに、トランプ政権は核戦略の見直しを発表することになっている。うわさでは新たな核攻撃能力、より有効な核兵器、そして米国が核兵器の使用を検討する場合の条件の拡大を訴えると言われている。

エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党、マサチューセッツ)は、レーガン政権の元国務長官であるジョージ・P・シュルツ氏に、米国が核兵器への依存をさらに減らすべきかどうか質問した。シュルツ氏は、核攻撃の応酬は世界全体に「壊滅的な」影響を与えるため、「我々は削減に努めるべきだと今も考えている」と述べた。

シュルツ氏は、「我々はしばらくの間そこに向かっていたが、今はすべて停止した。そして現在の問題は拡散であり、これが取り組むべき新たな問題であり、懸命に取り組むべきだ」と語った。

またシュルツ氏はキッシンジャー氏の提言にも同意した。それは、米国はロシアと真剣に対話を試み始めるべきであり、そうすれば他の国にも拡張して地球上から核兵器を削減することを目標とする共同事業に取り組むことができるだろう、というものだった。

北朝鮮についてのキッシンジャー氏のコメントに答えて、シュルツ氏は、米国は「レッドラインに慎重」である必要があると述べた。また、兵士が敵に武器を向ける際は、殺す準備ができているべきだと語った。

シュルツ氏は「こけおどしは身を亡ぼす」と言った。

米国は、中国とロシアをテーブルに着かせるために建設的に動くべきであり、中国は北朝鮮に対する影響力がより大きいので重きを置くべきだとするキッシンジャー氏の提言に、シュルツ氏は同意した。キッシンジャー氏は、米国は北朝鮮にさらなる制裁と圧力を課すために中国と緊密に協力すべきだと述べた。シュルツ氏は、中国の人口とGDPは減少しているので協力が受け入れやすくなるはずだと指摘した。

キッシンジャー氏はこう述べた。「それが私にとって望ましい方向性だが、また一方でどちらも効果がないという結果になるのであれば、私の意見では、韓国が朝鮮半島で自国のみが核兵器を持たない状況を受け入れることはないという事実になじんだ方が賢明だ」

キッシンジャー氏は、会議の冒頭で、もし米国が北朝鮮と交渉を余儀なくされて核開発を凍結するというところにまで達するのであれば、米国は北朝鮮の軍事能力を多少は正当化することになり、それは地域の他の国も促されることになると述べていた。

(海外ニュース翻訳情報局 泉水 啓志)

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