【英国:オピニオン】レインボーではなく赤いポピーで命をささげた全ての兵士に追悼を

英国の議会の様子をみると、議員たちが胸に赤いポピーの飾りをつけているのを目にします。英国では赤いポピーは、戦没者の追悼を意味します。
英国で、この赤いポピーの飾りをレインボーにするよう要求している一部のゲイの団体の意見が論争を巻き起こしています。
LGBT運動団体の行動も、現実主義とイデオロギー的な要求に 分かれているそうです。
この記事は、ロシア・トゥデイの記事ですが、執筆者のアレキサンダー・アダムスは、英国のアーチストであり作家です。


ロシア・トゥディ 2019/11/08

英国が 「英霊記念日曜日*」 を間近にし、戦没者の犠牲を追悼する準備を進める中、より広範な文化戦争の一面が明らかになった。
1919年と1920年にフランダースの戦場を訪れた人々が、数え切れないくらい多くの兵士が亡くなった場所に、赤いポピーの花が咲きほこっているのを見て、戦争で亡くなった人たちの象徴とされてきた。そして、1921年には、赤いポピーは英国の公式シンボルとなった。

訳注*・・・11月11日の戦没者記念日に近い11月の第二日曜日)

今年は、兵役中に死亡した同性愛者の軍人を追悼するために作られたレインボ―色のポピーが登場し、論争が巻き起こっている。軍人を含むコメンテーターたちは、同性愛者の活動家たちにポピーを政治的に利用しないよう求めている。筆者の個人的な意見を言えば、この意見は理にかなっていると思う。

ゲイの歴史を探求し、宣伝したいと思っている人々に、それを行う十分な機会がないわけではない。追悼を意味する赤いポピーは、この活動を関連づける者には不適切な物のようだ。

赤いポピーは昔から普遍的なシンボルである。それは、男性と女性、大英帝国と英連邦の臣民、快くあるいは渋々と兵役に服した人々を象徴しており、セクシャリティーや宗教の点では制限されていない。ゲイやレズビアンの軍人は、市民の尊敬と個人的な悲しみの象徴から全く除外されるようなことはない。ますます分裂している国において、世界的に最も大切にされている数少ない象徴の1つである。一部のゲイ活動家がこのシンボルをアイコンとして利用しようとしたことに強く反発しているのは、おそらくそのためだろう。

公共生活のあらゆる分野での代表を要求する活動家の影響力が拡大し続けているため、かつては支持していた味方でさえ抵抗を起こしている。法の平等と雇用機会への障壁が取り除かれたことで、ゲイ活動家の中には文化と言語に目を向けた人もいる。同性愛は政府から差別されているという事態に直面していない。実際、性的指向に基づく差別は違法であり、主流メディアや英国国教会からの不支持という協調的立場は存在しない。レインボーフラッグが半永久的な特徴として教会の外に掲げているところもある。

ゲイパレードを考えてみよう。1972年からほぼ毎年、ロンドンで開催されているラリー/パレードである。元々は、ゲイやレズビアンの人々の注目度を高め、社会問題を浮き彫りにし、6月か7月の1日だけだの祭事だった。この1日は、真っ先に1カ月間のイベントに拡大され、その後、夏の間、政府公認の祭事へと拡大された。政府からロンドンのイベントだけでも年間10万ポンドの公的資金の支援を受け、民間企業や交通機関、さらには警察が目に見える形で支援してくれる全国規模のイベントへと発展した。今年の夏、ブリストル中心部では紫のサーカスのテントが見かけられ、そこには「レディ・ボーイズ・オブ・バンコク」を宣伝する飾り付けがあり、カーディフのオーガスト・バンク・ホリデイは、週末にかけてのゲイパレードの祭事となっている。

LGBT運動の先頭に立っているのは、法の平等を勝ち取ることではなく、受け入れだけでなく承認も求めている。すべてのこのグループの行動主義を二つの形で見ることができる。

現実主義とイデオロギー。現実的な活動家は、特定し、説明し、解決策を提供する特定の問題を見ている。例えば、同性愛カップルの一方が死亡した場合、遺族は葬儀の手配や相続権の行使をする法的資格がない。この状況は限定的で、理解しやすく、多くの人の目には不当なものであると映ったため、協議の結果、同性愛者のパートナーは既婚の未亡人や未亡人と同等の扱いを受けることができるように法が改正された。

一方、イデオロギー活動家は曖昧で常に変化する問題に取り組んでいる。彼らは政治的・文化的表現を要求し、時には割当を要求する。

すなわち、言語をコントロールしたいのである。現実主義的な活動家たちが提起した問題を個別的に検討することは正しい。だが、政治的な活動家たちの要求は決して終わりがなく、すべての譲歩が新たな要求を生むため、拒否すべきである。これらの活動家は、一時的な短期的利益を得るために、脅迫、感情的脅迫、嫌がらせを用いて、抵抗する組織や個人を糾弾している。

「ゲイ・ポピー」をめぐる意見の不一致は、たいしたことではないように思えるが、定義可能な法的障害を克服するために努力している現実主義的な活動家が、より大きな影響力を要求するイデオロギー的な活動家に取って代わられるのではないかと、国民の間に深い不安が広がっていることを示している。


(赤い)ポピーは変えてはいけない。私たちの自由のために血を流した兵士たちには失礼だ。
それは赤が象徴していること。血。
白人の兵士は兵士であり、黒人の兵士は兵士であり、同性愛の兵士もまた兵士である。
私たちは皆、赤い血を流している。

(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子)

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