【海外ニュース情報局:調査分析】「日本ー韓国軍レーダー照射事件」海外記事がどのように報じているか。

Post by  Mariko Kabashima 2019/01/07  1:52 update 7:21

12月20日に、日本の排他的経済水域内での韓国海軍による対自衛隊へのレーダー照射事件が日夜マスコミでも大騒ぎです。
私も個人的な気持ちとしては、我が国の自衛隊への照射だけでも噴飯ものですし、その上、抗議した日本政府に対し謝罪を要求とは全く意味がわかりません。

しかし、ここは毎日2000本ほどの記事をチェックしている当サイト。
世界のニュースは、この事件をどのように報じ、世界の世論はどうなっているのかと気になり海外のニュースサイトを調べてみました。

 まあ結論からいうと、残念なことに多くの海外のメディアは、この事件にあまり興味がないと思われます。おそらく世論も。(当然韓国メディアは除く)

このことについての記事を探すほうが大変なくらいでした。
たまに見つけたとしても、AFP通信の丸写し、そして韓国側の論調が多い印象です。

各国の主な記事をいくつかピックアップしましたので御覧ください。

アメリカ

 

National Interest  1月5日:

タイトル: 北朝鮮を忘れた:次のアジアでの対決は日本対韓国か?

この記事では、日本側の対応を一応書いているものの、主に韓国の言い分を書いています。

以下抜粋

・国際海域での出来事。

・韓国政府は、日本のメッセージが解読不能だった。

・北朝鮮の核武装弾道ミサイルへの防衛などの共通の目的で同盟関係にある場合は特に、国際水域を共有している軍は、意図的に不手際を軽視したり、隠蔽したりすることができる。何人かの退役軍人は、この事件をそれほど重大な事件であるとみなすべきではないと非公式に示唆した。
それよりむしろ、最初に日本が、そして次に韓国が、相手を非難し、謝罪を要求しながら、外交的対立をエスカレートさせている。

 

UPI 1月3日:

タイトル :韓国、日本が海上航空機事件に拍車をかける

こちらは、一方的に韓国の聯合ニュースをもとに記事が書かれています。
UPIは、12月24日に第一報を報じ、それから1月3日と報じています。

以下抜粋

・日本側は、韓国海軍の艦艇が射撃管制レーダーで日本の航空機を狙ったと主張し、13分間の映像を公開した。しかし、聯合ニュースによると、映像にはレーダーによる照準は示されていないという。

・韓国政府は、根拠のない主張を行ったとして、日本に正式な謝罪を求めている。

 

DefenceNews 12月26日 :

タイトル :「レーダー対決」 は、韓日間の軍事衝突の前触れなのか?

流石にこのサイトは、防衛ニュースだけあって、非常に客観的に報じています。
以下抜粋です

・特に今回の事件は、韓国軍が作戦の焦点を北朝鮮の脅威から日本を含む周辺国の脅威に転換したことと重なる。

・韓国国防部当局者によると、近く発刊される2018年版の国防白書では、北朝鮮が初めて「敵」と表現されることはないという。その代わり、2年に1度の論文では、敵という言葉を 「脅威となるすべての勢力」 と表現している。

・『Defense Times』のアン・スンボム軍事評論家は、日本を中心とした周辺国の潜在的脅威への対応を中心に、韓国の軍事力増強が加速化すると予想している。

・「レーダーの問題は奇妙な出来事だったと思うが、この状況からは、米軍と米軍が将来直面する可能性のある状況が垣間見える」(アン・スンボム軍事評論家)


ロシア

RT(ロシア・トゥディ) 1月4日

12月24日に数行の簡単なロイターを引用した記事だけでしたが、1月4日に全面的に韓国の言い分をもとに発信

タイトル:韓国、日本機接近ビデオを公開、海軍艦艇を 「威嚇」 して謝罪を要求

韓国のビデオを引用しながら、次のように報じています。

以下抜粋


日本政府は今週、韓国の駆逐艦が通過中にレーダーを航空機にロックオンしたままにしていたと主張しているが、韓国側は、救助活動に光学カメラを使用していたと主張している。
また、彼らは火器管制レーダーを照射され、日本はなぜ回避操作ができなかったのか、証拠を求めた。

RTは、他のロイターとかAFPをもとに発信している各国海外のメディアと違うところがあります。それは、慰安婦問題、強制労働については触れていないということです。


香港

South China Morning Post  2019/01/04

タイトル:日本との緊張が高まる中、韓国政府は独自の武器レーダーの映像で反撃

こちらは、韓国側の動画を中心にアップしてますが、日本側の動画もアップしています。
内容も概ね両方の言い分を書いています。

以下抜粋

この中で、韓国が実効支配している離島に対する日本の領有権の主張と、韓国の戦時中の残虐行為の被害者に対する法的責任の否定が続いていることをめぐり、すでに緊張していた両国関係に、レーダー論争が火をつけた。

「近い将来、この論争から抜け出すことはないだろう。実務者間の実務的に解決すべき問題は、感情的な問題に膨れ上がった。」(アナリスト)

「この騒動に勝者はなく、敗者だけがいるだろう。」(アナリスト)

韓国の報道機関は、安倍首相が平和憲法の改正と国際問題における軍事的役割の拡大を求める運動への支持を集めようとしていることから、不釣合いな論争を引き起こしていると非難している。


12月21日に、ロイター、ワシントンタイムズ、UPIは、一斉にこの事件を報じましたが、最後の段落にいずれもこういった文章が入っています。

1910年から1945年までの日本の植民地支配期に発生した「慰安婦」の性的虐待と韓国の強制労働に対する補償問題をめぐり、日本と韓国の関係はここ数年で最悪に悪化した。

 

マレーシア、ベネズエラ、ニュージーランド、カタール、ブルネイ、フィリピン、など。APF通信を記事にしたものがほとんどなので、文章のどこかに慰安婦問題、徴用工問題なども同時に報じています。
  

 

しかしながら、英国をはじめとするヨーロッパはこの件についてはほとんど報じていません。
あったとしてもさらっとだけです。  

当サイトでよく引用しているエクスプレスUKなどは、北朝鮮のことはよく報じますが、この件については全く報じていません。  

 

このように、連日報道される日本の報道だけ見ると、この問題は世界の問題のように見えるかもしれませんが、当事国ではない国にとってはあまり興味のないことであり、日本国内からみる日本と海外から見る日本の視点といかにずれているのかが分かるのではないでしょうか。

  

そして、当サイトの記事でもうひとつ注目していだだきたい事は、「なぜ海外のニュースサイトが韓国側の言い分を多く取り上げるのか」ということです。

 

おそらくそれは、韓国発信の論調(韓国は悪くないという強い論調)の英語発信のニュースサイト、YOUTUBEなどのネットメディアの多さ、それらの論調の統一性につきると思います。

 

ジャパンタイムズをはじめとする日本の英字ニュース記事は、日本国内での朝日、毎日などと同じように、日本の問題や批判を発信する論調で記事を出しています。これが国内だけの発信でしたらあまり問題ありません。

 

しかし問題は、日本語が読めない多くの世界の人にとっての日本についての情報源は、これらの英字記事だけだということになり、それをもとに様々なサイトで引用されることです。

 

これが、米国のように英語が母国語であったなら、そのまま発信しても、世界の人に様々な論調の情報を提供し、伝えることができるのでそれほど問題ではないでしょう。世界の人が、その国の色々な論調の情報を得ることができますし。

 

そうでない日本の場合、このほんの数社の主流メディアによる英字発信が、日本の意見や考え方を海外に代表する情報になります。大衆にとっては、日本政府のそのままの言葉より、そこに書かれている記者の目線の論調を信じやすいこともあります。ですから、この辺りの発信は非常に気つけないといけないのではないかと思います。

 

ひと昔前と違い、情報の世界では国境がなくなり、どの国の人もネットが使えれば海外の情報を得ることができます。ちょっとしたことで、国際世論を日本の敵に回したり、味方したりというようなことがあるのではないでしょうか。

 

日本もそろそろ、国際世論というものを味方につけることが、平和的ですぐに取り組める防衛手段だということに多くの人が気づくべきではないかと思います。

 

ぜひとも政府は、早急に取り組んで欲しいと心から思います。

 

(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子)

 

※無断転載禁止

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