【必読:論文】一帯一路への反発に対する中国の取り組み

中国が掲げる一帯一路プロジェクト。
その中央に位置するパキスタンにある植民地時代の鉄道が重要になり、その修復に莫大な費用がかかると言われています。
しかし同国の経済は脆弱であり、中国以外にパキスタンへの投資を進めている国がないという現実。その中国資本の援助は罠であるという分析もあり、一帯一路周辺の国々は慎重になっています。
これからの世界経済は、アジアの国々が重要な位置を占めると言われており、今後どうなっていくのか細かく見ていく必要があります。
こちらの論文は、BESAから紹介いたします。
Post by ONTiB 2018/10/06 14:12

BESA 2018/10/03】

要旨: 中国は、一帯一路関連のプロジェクトの少なくとも一部が対象国を借金に陥らせたり、そのニーズを満たさなかったりしている可能性があることを暗黙のうちに認識し、調整の必要性があることを認めた。

 

 中国は、変化の必要性を認めることによって一帯一路への反発対応している。
中国国際経済交流センターの情報部副部長、Wang Jun氏が中国共産党のグローバル・タイムズ紙に「さまざまな段階、さまざまな国において開発の変化が生じること、特に政府の変化が伴うことは正常で当然のことである」と語った。
中国はこれらの国々と協力して戦略的調整を行うこともできるが、決して一帯一路(B&R)イニシアチブの再検討ではない」

中国の譲歩は当初、習近平国家主席による8月27日の演説で公表され、グローバル・タイムズ紙によって再確認された。
同じ週にパキスタンは、訪問中の中国の王毅外相に、中国パキスタン経済回廊(CPEC)への500 億ドル以上の投資を拡大することを要求したのである。
CPECは、中国の一帯一路イニシアチブに関連する単一国家最大のインフラ投資である。パキスタンは、製造業と貧困削減プロジェクトを投資に含め、拡大することを主張している。

中国はパキスタンを中国の原材料サプライヤー、中国製品と労働の輸出市場、特に新疆ウイグル自治区で中国が展開する、監視地区の輸出のための実験地に位置づけようとしている。
中国の一帯一路に対するアプローチの変化は、このCPECの大幅な改編を引き起こす。

パキスタンが金融危機を解決するための選択肢を検討する中で、中国の投資の焦点はさらに重要な意味を持つようになる。これらの選択肢には、国際通貨基金(IMF)からの最大120億ドルの援助が含まれ、IMFの支援には構造改革の束縛が伴う。

IMF支援パッケージは、パキスタンに、これまで明かされなかった一帯一路関連プロジェクトの正確かつ詳細な財政状態を提出することを求めている。

パキスタンの要求に対する王外相の反応は、声明が変化を示唆しているにもかかわらず慎重なようだった。王氏はCPECの方向転換はないにしても、すぐさま展開されるわけではないと指摘し、「両国はCPECの協力が次第に産業協力に移行することに同意した」と述べた。

パキスタンだけが中国の一帯一路への取り組みに反発する国ではなかった。ネパールは昨年11月にパキスタンと連携し、中国の通商条件のせいでダムプロジェクトから撤退した。

つい最近では、ネパールの8つの村での強制的再定住に対する抗議によって、中国三峡の子会社であるCWE Investment Corporationは750MW水力発電プロジェクトの撤退を検討しているようだ。
CWEは、「財務的に実現不可能」なので、プロジェクトをキャンセルすることを検討していると述べた。

マレーシアのマハティール・モムハマド首相は5月の選挙に勝利し、中国が260億ドルを提供するプロジェクトを一時停止またはキャンセルした。

同様に、ミャンマーは中国の資金提供によるベンガル湾の港湾プロジェクトにおいて、耐久不可能な債務を負うことを避けるために、73億ドルから13億ドルの小規模な開発へ大幅に縮小する交渉している。

中国は、北京の新疆ウイグル自治区との国境付近にある約1,158平方キロメートル分の紛争地域の譲渡と引き換えに、非公開の金額のタジキスタンの債務を抹消した。

ザンビアはスリランカの軌跡をたどり、ハムバントータ港の過半数の株式を中国へ渡さざるを得なかったのは、ザンビアが借金に対応することができなかったためである。
今月は国際空港と国家電力会社の支配権を引き渡す以外に道はなかった

中国の譲歩はまた、新疆のトルコ系イスラム教徒への中国による弾圧に対する国際的な関心が高まっている中で起こっている。

この譲歩は、一帯一路イニシアチブの地政学的性質を軽視し、持続可能な発展と雇用創出の側面を強調するための協調的な取り組みの一環である 。

米国の民間資本を海外開発プロジェクトへまわす政府間機関である海外個人投資会社(OPIC)の社長兼CEOレイ・ウォシュバーンは前に、一帯一路イニシアチブをインフラ計画に資金を供給して他の国に取り入る中国の策略と描写した。

中国は「諸国を支援するのではなく、財産を略奪している」とウォシュバーン氏は述べている。また同氏は、中国が意図的に被援助国を借金漬けの状態にし、「レアアースや鉱物などを貸し付けの担保として」狙うと非難した。

この見解によって今月グリーンランドは3つの空港を建設してアップグレードするために、中国の会社ではなくデンマークの会社を選んだ。

デンマークの外交・防衛政策学者、ジョン・ラーベック・クレメンセン氏は、「中国の小さな投資でさえ、グリーンランドのGDPの大部分を占め、他の目的に使用できうる多大な影響力を中国に与えることに大きな恐れがある」と語った。

ラーベック・クレメンセン氏はの懸念は、世界中の多くの国々に1兆ドルの投資を行う一帯一路の規模が、中国の指導者の考えに関係なく、重要な地政学的特質を与えているという一般的信念を反映している。

ワシントンを拠点とする戦略国際研究センター(CSIS)の最近の調査では、一帯一路は「中国内外の利益団体は習主席の外交政策ビジョンをゆがめている」と述べている。
この調査では、イニシアチブの位置づけは、中国の地方自治体および地方当局、企業が経済的、政治的優位性を得るために一帯一路としての活動をブランド化することを説得したと主張した。

ワシントンを拠点とする世界開発センターは、「債務問題が中国へ債権者として不利な依存関係を生み出す懸念がある」と警告した。
債務の増加と両国の債務問題の管理における中国の役割は、すでにいくつかの一帯一路イニシアチブ(BRI)国における内外の緊張を悪化させている。

 

BESAセンターの非常勤シニアアソシエイト James M. Dorsey博士は、シンガポールのナンヤン技術大学の S・ラジャラトナム国際スクールの上級研究員で、ヴュルツブルク大学のファン文化研究所の共同ディレクターです。

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