【エネルギー問題:論文】MITエネルギーイニシアティブ:気候変動の問題解決には、原子力エネルギーの利用が不可欠である

9月6日、北海道で震度7の地震が発生しました。
そして、道内全体が停電に陥り、この地震で泊原発の外部電源が喪失し、主要電力を供給していた道内最大の火力発電所の苫東厚真火力発電所が停止し、その全面的復旧は、11月以降の見通しだとのことです。
一部では、泊原発の再稼働について賛否両論の意見が起きていることはご存知だと思います。
この地震の2日前、MITエネルギーイニシアティブが、「未来における地球規模の電力使用量の増大に伴い、気候変動の問題解決には、原子力エネルギーの利用が不可欠である」という内容の新しい研究論文を発表したばかりでした。
北海道地震での現在の電気が供給されない不自由さのさなかにいらっしゃる被災者の方々のニュースをみると、一刻も早く日常生活が戻らないものかと祈るばかりです。
私たちは、現在そして未来において、何らかのエネルギーを使用するということは、何らかのリスクがどのエネルギーにも発生するということを知った上で、研究を続け、よりよい未来を模索していくしかないのかもしれません。
この論文の研究結果が、みなさんの一考察の材料になっていただければ幸いです。
この論文は、原著者の許可を得た上で、翻訳紹介いたします。尚、翻訳監修として尾本彰教授にご協力いただきました。
ご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
ぜひご覧ください。
Post by Mariko Kabashima 2018/09/11  23:24  Update 2018/09/15 22:29

原子力エネルギーの未来に関するMITエネルギーイニシアティブ研究報告


研究結果は、新しい政策モデルとコスト削減技術が、気候問題解決において原子力エネルギーが重要な役割を果たすのに役立つことを提言している。

MIT NEWS by Francesca McCaffrey | MIT Energy Initiative September 4, 2018 】

気候変動の影響を遅らせたり後退させたりするために必要な炭素排出の大幅な削減を、世界はどのようにして達成できるのだろうか。
マサチューセッツ工科大学の新たな研究の執筆者たちは、地球全体で低炭素エネルギー技術に原子力エネルギーが有効的に組み込まれない限り、気候変動の問題を解決するのは遥かに困難で、費用もかかるだろうと述べている。
しかし、原子力エネルギーを主要な低炭素エネルギー源として活用するためには、コストと政策の問題に取り組む必要がある。

9月3日に発表されたMITエネルギーイニシアティブの「炭素制約下の世界における原子力エネルギーの未来」では、現在の世界の一次エネルギー生産の5%しか占めていない原子力発電容量の世界的な失速の理由を分析し、その傾向を阻止し逆転させるための方策についてこう説明している。

MITの研究者が率いる研究グループは、アイダホ国立研究所とウィスコンシン大学マディソン校の研究者と共同で、今週のロンドン、パリ、ブリュッセルでのイベントで、その研究結果と提言を発表した。そして、9月25日にワシントンで、10月9日には東京で同様のイベントが開催される。
MITの大学院生、学部生、博士研究員、ハーバード大学の教員、様々なシンクタンクのメンバーも研究チームのメンバーとしてこの研究に貢献した。

「我々の分析は、世界の多くの地域で脱炭素化されたエネルギーの未来を達成するためには、原子力エネルギーの可能性を実現することが不可欠であることを論証している」と、東京電力の寄付講座の教授であり、MIT原子力科学技術部の副部長であるジャコボ・ボンジョルノ(Jacopo Buongiorno)氏は述べている。

彼は次のように加えた。
「新しい政策とビジネスモデルの導入と同様に、投資効果の高い原子力発電所をより手頃な価格で導入できるような建設のイノベーションを組み入れることである。
(そうすれば)気候変動に対処するために排出量を削減しながら、増大する世界のエネルギー需要を満たすために原子力エネルギーを利用することが可能である」

この研究チームが、特に電力部門が脱炭素化の有力な候補であると指摘している。
世界の電力消費量は2040年までに45%増加する見込みで、同チームの分析によると、低炭素シナリオから原子力を除外すると、平均的な電力コストが大幅に上昇する可能性があることが示されている。

「原子力産業が直面する機会と課題を理解するためには、技術的、商業的、政策的側面の包括的な分析が必要である」と、MITEIの学長でシェブロンの寄付講座の化学工学教授、ロバート・アームストロング(Rovert Armstrong)氏は述べている。
「過去2年間にわたり、このチームはそれぞれの問題を検討してきたが、その結果得られた報告書には、政策立案者や業界のリーダーが将来の選択肢を評価する際に役立つであろう指針が含まれている」

このレポートは、原子力発電所建設、現在及び将来の原子炉技術、ビジネスモデル及び政策、並びに原子炉安全規制及び許認可についての提案を論じている。
研究者らは、より安全で投資効果の高い原子炉の時代を迎えるためには、原子炉の構造建設手法を変える必要があることを発見した。
その中には、原子力プロジェクトを予定通りに予算内に収めることができる実証済みの建設管理手法も含まれている。

マサチューセッツ工科大学の客員研究員でアイダホ国立研究所の研究責任者であり研究所フェローでもあるデビッド・ペッティ(David Petti)氏は、次のように述べている。
「工場(工場や造船所での製造のより積極的な活用を含む)での標準プラントのシリーズ生産への移行は、従来の建設部門の生産性が低い国では、実現可能なコスト削減戦略となり得る」
「将来のプロジェクトでは、固有かつ受動的な安全機能を備えた原子炉設計も取り入れるべきである」

これらの安全機能上の特徴には、化学的および物理的に高い安定性を有する炉心材料、および非常用交流電源を殆どあるいは全く必要とせずとも事故時の外部からの介入も最小限で済むような工学的安全システムが含まれている。

このような機能は、シビアアクシデント(訳注:燃料破損を伴う原子炉事故)が発生する可能性を低減し、事故が発生した場合の敷地外への影響を緩和することができる。
このような設計はまた、新規プラントの許認可を容易にし、それらのグローバル展開を加速することができる。

「原子力が提供できる経済的機会と低炭素の可能性を利用するためには、政府の役割が不可欠である」と、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院上級講師で本研究の共同議長であるジョン・パーソンズ(John Parsons)氏は述べた。
「この未来を実現するためには、すべての低炭素エネルギー技術(再生可能エネルギー、原子力、炭素回収を伴う化石燃料)を同等に置いて民間の原子力開発投資を促進する選択肢を模索する、新たな脱炭素化政策が必要である」

この研究は、原子力エネルギーに対する政府支援のための詳細な選択肢を提案している。
例えば、研究者らは次のように提言している。
「政策立案者は、既存の発電所が早期に閉鎖されることを避けるべきである。
これは、温室効果ガス排出量を削減する努力を阻害し、排出削減目標を達成するためのコストを増加させる」
このような閉鎖を回避する1つの方法は、ゼロ・エミッション・クレジット (温室効果ガスを排出せずに発電を行う発電事業者に支払われるクレジット) の導入である。
これは、現在、ニューヨーク、イリノイ、ニュージャージーで実施されているという。

この研究から得られたもう1つの提案は、政府が4つの「手段」を用いて新しい原子力技術の開発と実証を支援することである。
4つの手段とは、「規制上の許認可コストを分担するための資金」、「研究開発費の分担金」、「特定の技術的マイルストーン達成のための資金」、「新しいデザインのデモンストレーションを成功させたことに関する設計製造者への報酬(プロダクション・クレジット)への資金提供」である。

この研究には、米国および国際的な現在の原子力エネルギー規制の情勢に関する調査が含まれている。
研究者らは、原子力エネルギーを持つ多くの国では、社会的、政治的、文化的に大きな違いがあるかもしれないものの、原子炉計画の安全性を評価するための基本的原理は公平に統一し、基本的に整合性のとれた規制原則に反映されるべきであると述べている。
彼らは、商業用原子炉設計の国際展開を可能にし、世界的に高いレベルの安全性を標準化し確保するために、先進的原子炉に対する規制要件を国際的に調整し、整合させることを推奨している。

本研究は、原子力の未来を実現するために、コスト削減を進めることと将来を考慮した政策立案の両方が急務であることを結論として強調している。

「炭素制約下の世界における原子力エネルギーの未来」は、研究者、政策立案者、産業界の指針となることを目的とした研究の「未来」シリーズの第8回である。
各レポートは、炭素が制約された世界で急速に増大する世界のエネルギー需要に対応できる程度の規模で貢献可能な技術の役割を研究している。

2003年の「原子力エネルギーの未来」レポートの原子力エネルギーが、これらの学際的研究の最初のテーマだった。(最新版は2009年に発表)
このシリーズには、核燃料サイクルの将来に関する研究も含まれている。
このシリーズの他のレポートでは、二酸化炭素隔離、天然ガス、電力系統、太陽光発電に焦点を当てている。
これらの包括的なレポートは、研究者の学際的チームによって執筆された。 この研究では、著名な外部諮問委員会からも情報を得ている。

翻訳監修:尾本彰教授

(海外ニュース翻訳情報局 : 翻訳 樺島万里子)

 トップ画像 :emmagrau,pixabay
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