【元米軍海兵隊士官・提言】時には待たなければならないこともある

世界中が注目した6月12日の米朝首脳会談の結果については様々な論評が見られますが、今のところ(特に日米マスコミにおいては)会談は日米にとって「失敗だった」「成果がなかった」という見方が多いように思えます。
しかし、トランプ大統領があらかじめ「交渉は数回に及ぶ」と発言していたように、そもそも6月12日にすべての結論(決裂の末の軍事攻撃を含めて)が出ることが期待されていたのでしょうか? 
詳細についてはいささか不明瞭な共同声明と同様に、グラント・ニューシャム氏の見解も現時点では白黒はっきりしたものではないようです。
ただ、今回の会談が、過去に何度も北朝鮮に裏切られてきた交渉とは違うという点も彼は指摘しています。
こちらは、AND Magazineに掲載された論文を翻訳したものです。

Post 2018/06/16 12:41

Sometimes You got wait  by Grant Newsham 】

北朝鮮(との合意内容)について明らかになるには、時間がかかるだろう

トランプ大統領と金正恩とのシンガポールでの首脳会談は、人生には待つしかないこともあるということを思い起こさせてくれるいい機会だ。

首脳会談の前、会談中、そして終了後に出されたコメントの多くは、予言者たちによって出されたように見える。彼らはまるで、トランプや金や中国人たち、安倍晋三、韓国の文大統領、ジョン・ボルトンといった人たちが考えていることを全て理解していて、そして未来において何が起こるかについても同様に自信があるようだ(来年のNCAAバスケットボールのトーナメント組み合わせについても予言してくれればいいのに)。

専門家の先生たちがおっしゃるには、首脳会談は失敗であり、成功でもあり、もしくは、たいしたことは起こらなかった、ということだ。

まったくもって紛らわしい。

物事をあまりにも近くから見過ぎることは――専門家はそれをしがちなのだが――株価を毎日追うようなものだ。株価は毎日上下動する。上がったときには嬉しく、有頂天にもなる。そして株価が下がれば嬉しくはないし、ときにはパニックを起こしたりもする。人は冷静なものの見方を失ってしまいがちだ。

物事を判断するには、時には長期的な視点を持つのがいい。たとえば、その出来事の6か月前から、そして、落ち着きどころが見えてくる6か月後ぐらいまで。

2018年の初頭、冬季オリンピックの前までは、まるで北朝鮮との戦争が今にも始まるかのようだった。それから6か月経った今、お互いを罵り合った挙句に、トランプ大統領と金正恩はシンガポールで会っている。誰がこんなことを想像できただろう? こんな、まるでジェットコースターに乗っているようなパニックから上機嫌への急転、そして逆行(さらにまた逆行)は、少し距離を置いて見た方がいい。

首脳会談の前にトランプ氏に対して、ある(否定的な)見方をしていた人は、おそらく会談後にも同じ見方をしているだろう。1年前にはトランプ氏は戦争屋と呼ばれていたのに、今では彼は何の見返りもなく譲歩しすぎる宥和主義者だと非難されているのは皮肉なものだ。

私は共和党員で、トランプ氏のことを抑制の効かないごろつきだと糾弾する文書にはサインしなかった。

だが私はいつも、国務省の北朝鮮担当だったクリストファー・ヒルが平壌政府に常識を持った行動をするよう語り掛けることを望んでいたし、マデリーン・オルブライトや、たとえジミー・カーターでさえ、それを引き継いでくれればよかったと思っている。だが、彼らはそうしなかった。

にもかかわらず、自国民を苦しめながら核兵器と長距離ミサイルを開発させ続けた、誤った対北朝鮮政策に関与していたかつての合衆国政府高官の多くが、今やトランプ氏の方針に忠告を与え、批判している。まったく、彼らにはこう聞いてみたい。「貴方に機会があったとき、一体何をしていましたか?」と。

私は、北朝鮮と共に何を成し遂げるかを証明するチャンスをトランプ政権に与えることに賛成だ。一体どういうことになるだろう? 誰にそんなことがわかる? だが、これは少し時間をかける価値がある。

トランプ氏が北朝鮮との会議に誰を同行させたかを見ると、安心する。暴君たちの友達とはとても言えないジョン・ボルトン。元海兵隊少佐という肩書よりも、元国務長官の方のジョン・ケリーがあまり馴染みのないボストンから来た手強い論客であるジョン・ケリー(大統領首席補佐官)。そして、マット・ポッティンジャー。国家安全保障会議の中でも、中国国家安全部のごろつきに殴られる経験をしたことのある数少ない男の一人だ。

私なら、トランプ氏がシンガポールでした事をその通りやっただろうか。多分しなかっただろう。私はリング上にいたわけではないが、米韓軍事演習を「挑発的」とは表現しなかっただろう。私なら、なんの見返りもなく軍事演習を延期しただろうか? 多分しなかっただろう。とはいえ、私たちのような外野には知る由もない「見返り」がある可能性はあるかもしれないが。

そして、いかなる場合においても、もし北朝鮮が(約束したことを)示さなければ、軍事演習はいつでも再開可能だ。トランプ氏は、必要とあれば突然方針変更をする能力があることを実証してきた。

さらに、いかに金一族を喜ばせておくかをアメリカ側が悩まされ続けてきた過去の平壌政府との交渉とは違い、今回ボールを持っているのは金の(そして中国の)側だ。もし北朝鮮が協力しないようであれば、我々はトランプ氏が最近猶予を与えたばかりの中国の通信機器メーカーZTEからプラグを引き抜き、そしてさらに(まず手始めに)中国人民銀行に対する厳しい制裁を課すことを見ることになるだけだ。そのとき北朝鮮は、「最大限の圧力」がどういうことを意味するのかを知ることになるだろう。

この場合においては、もしアメリカ側が、期限を切るという本来の立ち位置に固執し、平壌政府(あるいは北京政府)に騙されることなく、そしてもし物事がうまく進んでいないと言おうとするなら、韓国主導のこの陽動作戦を否定し、こう言えるはずだ。「我々は、努力はしたんだ」と。

トランプ氏の気まぐれな行動に気を揉んでいる同盟国に関しては…まあ、彼らはいつだって気を揉んでいるんだ。おそらく、少なくとも、トルーマン政権の頃から。

ドナルド・トランプがホワイトハウスに来るよりずっと前、聖別された外交エリートたちがまだがっちりと支配していた頃、東京政府が「ジャパン・バッシング」や「ジャパン・パッシング」を気に掛けていたことを誰か憶えているだろうか。延期された軍事演習を心配する韓国に関しては、文大統領のアドバイザーの何人かがアメリカこそが問題だと公言していることを考えれば、いつもアメリカだけが信用のおけない同盟国だとは言い切れない。それどころか、軍事演習の一時的な延期は、南北朝鮮の同胞愛を活気づけると、韓国では歓迎されることだろう。

さらに言えば、アジア中のアメリカの同盟国は、2012年にオバマ政権がスカボロー礁に関して同盟国フィリピンを見捨て、事実上中国が南シナ海を支配下に置くように仕向けた一連の行動を起こしていた時から、気を揉み続けてきた。

だから、シンガポールでの首脳会議を見て、私なら、パーク・ストラテジーズのショーン・キング(上席副社長)の言葉を借りて、「慎重に悲観的」だと言おう。

だが私は、数か月、もしくはさらに長い間、物事がどう進むかを見極めるために待つことはやぶさかでない。

時には、待たなければならないことがある。

執筆者 : グラント・ニューシャム
日本戦略研究フォーラムの上席研究員であり、元米国海兵隊士官。米外交官、ビジネスエグゼクティブ、米国海兵隊員として日本とアジアで20年以上の経験をもつ。日本自衛隊の初のUSMC連絡将校だった。日本の水陸両用の対応を発揮する役割を果たし、他の地域水陸両用発展的活動にも関わった。

(海外ニュース翻訳情報局 加茂史康 MK)

♥米朝会談についての一方的すぎる主流メディアのコメンテーターは、ニュースに必要ないと思う方はこちらをクリックを願いします。 ⇒ 
海外ランキング

 

 

この記事が気に入ったらシェアをお願いします。