【米国:オピニオン】左翼リベラルが銃について嘘を続ける限り銃の議論はできない

米国では銃乱射事件が起こるたびに、銃の規制をめぐる議論が話題になります。日本では報道されるのも表面的な内容が多く、そもそも銃とは縁遠いので関心も薄いかもしれません。

米国では、国民が武器を保持し携帯することは憲法で保障された個人の権利です。それは、「良く規律された民兵は自由な州の安全にとって必要であるから」だと記されています。それが良いか悪いかという議論はまた別の話ですが、世界最大の軍事力を持つ米国の強さの根底にはそのような背景があるのかもしれません。

大雑把に言えば、米国で銃規制に賛成しているのは左派、リベラル派であり、銃所有の権利を守ろうとしているのは保守派だと思いますが、今回の事件後も政治的な動きも含めて、論争が続いています。ご紹介する記事では、議論のベースとなるべき統計データについて左翼リベラル派の提示する欺瞞を保守派が批判しています。フェデラリストから紹介します。

Post 2018/02/22  10:37

the FEDERALLIST by By David Harsanyi   2018/02/16】

銃規制支持者が虚偽や誤解を招く統計を提示しているために、暴力について真の議論をすることが事実上不可能になっている


学校での恐ろしい銃撃事件が起こると様々な感情が出てくるものであり、それは全く無理もないことだ。曖昧な「何かしなくては」という銃規制法案推進の動きも即座に起こるのだが、事件を防止すると称していても実際には全くつながりのないものになっていることが多く、理解しがたいところがある。さらに悪いことに、こういった取り組みのほとんどが嘘や、都合の悪い事実を隠した一方的な内容に支えられており、そのために問題についての誠実な議論が事実上できなくなってしまうのである。

際限のない課題ではあるが、ジョー・スカボロー氏がワシントン・ポストに寄せたパークランド銃撃事件に関する論説を例として挙げよう。というのも彼が用いている論点には、現代の銃所有について最も不正なものがいくつかあるからだ。

ジョー・スカボロー

同氏は共和党の元議員であり、かつて「アサルトウェポン」禁止の撤廃に投票しており、政治的なリスクのないときにブギーマン(怪物)のようなNRA(全米ライフル協会)に対して一度も「立ち上がった」ことはなかった。そして我々には自らが「道理をわきまえた」保守派であって、憲法修正第2条の信奉者であると述べている。スカボロー氏は2008年のヘラー判決について、「市民は自衛を目的として自宅で拳銃を所持する憲法上の権利を持つということを、裁判所が認めたことに安堵した」と書いている。

それは良いことだ。ところが、スカボロー氏がヘラーについてことのほか限定的に明示している内容 — 自衛を目的に拳銃を自宅で所持すること — は、政治的な主張としては都合の良いものかもしれないが、誤解を招く恐れがある。ヘラー判決では、憲法修正第2条は単に自宅での防衛だけでなく、あらゆる「合法的な目的」で武器を保持し携帯するための個人の権利である、とされた。修正第2条は「対立の場合に備えて武器を所持し携帯する個人の権利を保障している」と、判決が下されたのだ。それはまた、ライフルとショットガンは「弾を込めずに、分解するかトリガーに鍵を取り付けて」保管することを義務付けたワシントンDCの法律を部分的に無効にしてしまった。

それは自宅での防衛のことでも「拳銃」のことでもないのだ。

それでスカボロー氏は次のような文章を書いている。

トランプとNRAが、戦争のための武器を備蓄することは神が与えた憲法上の権利だと言おうとするなら、それは嘘だ。けれども、私の言葉をそのように取らないで欲しい。コロンビア特別区(ワシントンDC)対ヘラーの訴訟で、アントニン・スカリア最高裁判所判事は、銃所有に対する規制は憲法修正第2条と両立すると判決を下した。スカリア氏はその「重要な制限は・・・『危険で異常な武器』の携帯を歴史的に禁止してきた伝統によって相当に裏付けられている」と記した。

違法にフル・オートマチックのM-16を入手しない限り、戦争のための兵器を備蓄する人は誰もいない。その上スカボロー氏は、スカリア判事の話を文脈から外れて引用している。言うまでもなく銃の所有には制限がある。そしてこうしている間にも、1万以上の銃に関する法律を犯罪者は無視して破っているのだ。このような法律の多くが「危険で異常な武器」を禁止するか、厳しい制限を課している。

それでもヘラーでは、修正第2条によって「法律を順守する市民が一般的に使用する」武器は保護されるという判決だった。AR-15は明らかにこの基準に合致している。スカボロー氏とその他の人々がセミ・オートマチックの拳銃とライフルを全て禁止することを提案しているというのなら、それは彼らの権利だ。けれども、AR-15が「戦争のための武器」であるとか、特に他の広く所有されている銃と比べて「危険で異常」であるという主張は誤解である。スカリア判事であればセミ・オートマチック武器の禁止を支持していただろうという考えは噴飯ものに思える。

「アサルトウェポン」とは大抵の場合、「見た目が恐ろしい」という意味合いだ。AR-15は他のセミ・オートマチックとように機能する。格好の政治的なターゲットに仕向けているのは主としてそのライフルの見た目なのだ。また、おそらくそれが、最近の学校での銃撃事件の犯人が引きつけられる理由でもある。ところが2004年にアサルトウェポン禁止が失効しても、銃による暴力の増加を招くには至らなかった。実際、銃による暴力はやがて歴史的なレベルまで低下したのだ。(犯罪発生率は銃所有者の増減より、社会的な傾向や経済との関連がはるかに大きいことを示す証拠は非常にたくさんあるが、それはまた別の話しだ。)

その上、現在市民が手にしているAR-15はおそらく約1,500万丁であるというのに、それらが銃による死亡の原因となっている例は少ない。2016年の銃による殺人のうちライフルが使用されたのは3パーセント(そして銃による犯罪では2パーセント)であり、それら全てがAR-15ではない。銃による殺人と自殺は、拳銃の類を使って行われることが圧倒的多数に上る。米国人が所有できるようにすべきだとスカボロー氏が考えているのは、そういった拳銃のことなのだ。

また殺人犯が学校で銃を乱射するのにAR-15は必要ない。1999年から2013年にかけて、銃乱射事件 — 1度の銃撃で4名以上の死者が出たもの — で「アサルトライフル」が使用されたのは27パーセントだった。チョ・スンヒはバージニア工科大学の銃所持禁止区域で32名を殺害したが、2丁のセミ・オートマチック拳銃を使用していた。スカボロー氏はこう続けている。

「銃のロビー活動はパニックに陥っているかもしれない。というのも歴史は味方しないからだ。1994年以来、米国のハンターの数は約15パーセントにまで減少した。カート・アンダーセン氏が著書の『Fantasyland: How America Went Haywire(おとぎの国:米国はこうしてめちゃくちゃになった)』の中で指摘しているように、米国人のわずか3パーセントが全国の銃の約半数を所有している。米国人の4分の3は銃を持ってすらいない。」

現在自分かその配偶者がハンターである世帯で暮らしているのが、成人のわずか15パーセントであるというのは本当だ。これは史上最低であり最も高かったのは1977年の31.6パーセントであった。ところがスカボロー氏が2番目に提示した統計は、都合よく世帯から個人に話を変えて、銃所有者の数が実際よりもはるかに少ないように見せかけているのだ。確かに銃のコレクターは個々の銃の大きな割合を所有しているだろう。そしてまた、幼児と高齢者は通常シグ・ザウエル(訳注:銃器メーカーの名前)をコレクションすることはない。しかしギャラップによると、42パーセントの世帯が今でも銃を備えているのだ(もっとも、この質問に正直に答える米国人が多いとは思えないのだが)。その数字は1961年の49パーセントから、1998年の34パーセントまで幅がある。総じて、それらはまだ間接的な数字であり、わずかに変化がある。このようにして、銃を所有する米国人の数を人為的に減少させようとする取り組みと共に行われているのが、NRAという組織に責任を負わせようとするものだ。そこはどうやら地下に大金を持っていて、政治家を大量殺人に加担させる超自然の力を持っているらしい。その全てが、「常識的な」銃器関連法案を阻止する人はわずかしかいないという認識を作り出すことを意図している。

スカボロー氏は、米国人が支持していると自らが主張する不透明な規制をたくさん挙げると、「どの世論調査でも私がかけ離れた存在ではないことが証明されている」と述べた。(スカボロー氏が、共和党は銃規制法案の適用を止めるために多大の犠牲を払うつもりだと我々に最後に述べた時、共和党が圧勝したことを忘れないでおこう。)さて、信念を持つ人々は気まぐれな投票結果で自分たちの立場を決める事はないが、特効薬を待つ傾向にある。誰もが求めるのはより安全な銃の所有だ。多くの人が望まないのは、合法的な所有を禁止し、犯罪防止に何の役にも立たない法律だ。それは基本的には民主党がみな提案してきたものなのだ。

問題の大部分を占める事が何かと言えば、銃規制提唱者が銃 — とりわけ特定の形式の銃 — に並外れた執着心を持ち、適切な執行や警告システム、銃乱射を引き起こした文化的傾向、精神衛生上のリスク、また、このような銃撃事件の報道の仕方に対してほとんど関心を持っていないということなのだ。このように総合的な解決策を拒否することから、それが彼らの本当の意図を実証することになり、修正第2条支持者が当然ながら疑いを持つことにつながるのだ。

執筆者:デイビット・ハーサニーイー(David Harsanyi)
全米ネットの上級編集者 コラムニストであり、3冊の本を執筆。彼の作品は、ウォールストリートジャーナル、ワシントンポスト、ウィークリースタンダード、ナショナルレビュー、リーズン、ニューヨークポスト、その他多数の出版物に掲載。また、フォックス・ニュース、CNN、MSNBC、NPR、ABCワールド・ニュース・トゥナイト、NBCナイトリー・ニュース、そして全国の数十のラジオ・トークショーに多数登場。

(海外ニュース翻訳情報局 泉水 啓志)

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