【南太平洋事情 : 深刻】西側諸国にそっぽを向かれ、南太平洋は中国を頼る

中国がスリランカの港湾やモルディブの土地を奪っているというニュースをお読みになった方もいらっしゃると思いますし、当サイトでも何度か、ミクロネシアのヤップに対する中国の投資についての記事を掲載してきました。今回の記事は、ヤップのみならず、太平洋諸国全般、特に資源の豊富なパプアニューギニアとフィジーに中国が積極的に援助を増やしており、一方でオーストラリアをはじめとする西側諸国は逆にそれら諸国への影響を弱めているという、深刻なレポートです。この記事には日本は一切登場しませんが、おそらくそれは、現在の日本からの援助がここに名前の出てくる先進国と比較しても少ないからでしょう。

ところで、今年の5月18-19日に、福島県いわき市で第8回太平洋・島サミットが開催されるのをご存知でしょうか。外務省のサイトによると「太平洋島嶼国が直面する様々な問題について首脳レベルで率直に意見交換を行い,地域の安定と繁栄に貢献するとともに,日本と太平洋島嶼国のパートナーシップを強化することを目的」とした国際会議です。是非、この記事にあるような現状を念頭に置いた上で、日本のより積極的な関与について話し合って頂きたいと思います。

*こちらは、アジアタイムズからの記事です。

Post 2018/02/21  17:21

Asia Times  By ALAN BOYD  2018/02/19  】

 昔からの寄贈国であるオーストラリア、ニュージーランド、アメリカが貧しい島国への援助を打ち切るなか、中国が存在感を増している

昔からの西側寄贈国が南太平洋への援助公約を打ち切る隙を、中国がこっそりと埋め始めている。そして、中国の惜しげもない援助を受ける側の貧しい島国の多くは、どうやらこの動きを歓迎しているようだ。

先月、オーストラリア国際開発相コンセッタ・フィエラヴァンティ=ウェルズは、南太平洋地域での中国政府の援助活動を「どこにもつながらない道」や「役に立たない建物」(無用の長物)への投資だと、手厳しく批判した。

「建設されている施設が確実に生産的で、経済的・衛生的に実際に役立つということを確信したいのです」と彼女は語った。

ジュリー・ビショップ外相はより如才なく「太平洋の途上国に持続的な経済発展を促し、かつその地域の政府に面倒な負債を押し付けることのないような投資であれば、オーストラリアは歓迎します」と述べた。

だが現実には、オーストラリアと西側同盟国が、自らの援助額の削減と、中国が南太平洋の十数か国に対して関心を示しているという理由から、その地域での伝統的なリーダーシップを明け渡そうとしているという問題がある。

オーストラリアの調査団体であるロウリー研究所の調べでは、中国は2006年から2016年の間に、9つの太平洋諸国(フィジー、東ティモール、パプアニューギニア、サモア、トンガ、ニウエ、クック諸島、バヌアツ、ミクロネシア連邦)に毎年約2億900万ドルを援助している。

オセアニアの政治地図。中央太平洋諸島に集中する地域 (メラネシア、ミクロネシアとポリネシアで、オーストララシアとマレー諸島を含む)

 

オーストラリアは年間約8億7000万ドルを拠出し、太平洋諸国に対する全世界の援助額の6割を占めている。ニュージーランドは2億3500万ドル、アメリカは2億2100万ドルを援助している。しかし、ニュージーランドとアメリカ両国は実質援助を減らしているため、中国が近いうちに世界第二の援助国になるだろう。

ドナルド・トランプ政権はアメリカからの援助の3割を削減すると伝えられており、そのうち特に東アジアと太平洋地域は44.1パーセントの削減となる。この政策が実現したとすると、東ティモール、ミクロネシア、マーシャル諸島は今受けているすべての援助額を、そしてパプアニューギニアは66.4パーセントを失うことになる。

2月初旬にニュージーランドのウィンストン・ピーターズ外相が語ったところによると、同国の援助プログラムは9年間予算不足の状態が続いており、経済協力開発機構(OECD)加盟国が平均で国民総所得の0.4パーセントを援助しているのに対して、同国は0.23パーセントにまで落ち込んでいるという。その値は現在見直されようとしているが、太平洋諸国への援助額が急増する見込みは薄い。

オーストラリアは広範にわたる予算削減にもかかわらず太平洋援助プログラムを守ってきたが、2017-2018年度予算におけるいくつかの国への援助を10パーセントまで削減すると見込んでいる。ほとんどの援助は近隣のパプアニューギニアに向けられている。同国は1974年に独立を果たすまでは、国際連盟によってオーストラリアの委任統治領だった。

中国政府は、一帯一路政策のインフラ構築に太平洋諸国を巻き込むことを視野に、資金の40パーセントを輸送に充てている。

更に20パーセントが政府、市民組織、教育に注ぎ込まれる。中国は年間8億5000万ドルを、地域の主要な援助機関である太平洋諸島フォーラム事務局に渡し、さらに能力形成のための奨学金も提供している。中国は最近、この地域で4千名以上の技術者を訓練している。

中国の援助はほぼパプアニューギニアとフィジーに振り向けられている。この地域の他の国々がかろうじて最低限の生活レベルを保っているのに対し、それら2か国だけが経済的な価値を提供できるからだ。パプアニューギニアは銅、原油、金資源を採掘するための資金を必要としており、一方フィジーは豊かな木材と海産物の可能性を秘めている。

「(パプアニューギニアは)我が国と国民の利益に最もかなう国からの援助と協力を受ける準備ができています」と、リムビンク・パト外相は、オーストラリアのフィエラヴァンティ=ウェルズ議員の中国の援助への批判に対して回答した。

「オーストラリアとの経験を活かし、我々はその他すべての開発パートナー国と共に、正しい過程を踏んでいることを確証しながら進めていきます」

“過程”は、少なくとも中国が資金を出した計画のひとつでは正しく進まなかった。3億ドルを注ぎ込んだ同国最大規模のラエ港の拡張プロジェクトだ。想定外の技術的問題によって1億3400万ドルの追加資金を計上した後、アジア開発銀行はこのプロジェクトを「成功にはほど遠い」と評価した。

中国の援助計画による費用と利益の関係については、もっと議論の余地があるだろう。なぜなら、金額にして80パーセントの援助が譲与的条件貸付だからだ。ジュリー・ビショップの「面倒な負債」というとげのあるコメントはここから来ている。

ほとんどの貸付金は年率わずか2~3パーセントの利息で、5~7年の猶予期間を含む15~20年の返済期間であり、一般的な基準と照らし合わせると寛大だといえる。

しかし、西側諸国の中規模な都市よりも少ない国内総生産(GDP)しかない国々にとっては、それでも相当な挑戦となる。

たとえば、フィジーは2016年には対GDPで5.2パーセントの赤字予算と8億3340万ドルの対外債務を計上している。パプアニューギニアの予算は対GDPで5.7パーセントの赤字で、対外債務は220億4000万ドルに上る。

「ほとんどの場合において、それら島国の政治的指導者たちは、中国からの援助の利益と危険性を十分に認識しています」。オーストラリア戦略研究所の上級アナリスト兼オーストラリア国立大学の上級主任研究官アンソニー・バーギンは最近ストラテジスト誌にこう書いた。

負債問題はさておくと、中国はその地域における西側諸国の利益に対してほとんど脅威を与えず、援助プログラムに対してより対等なアプローチを取るだろうと、バーギンは信じている。

「今は、近隣の島嶼国と、何が彼らにとって最善なのかを話し合い、我々が促進できるところはそうしながら、彼らの最終決定を尊重する時です。たとえ援助がひも付きであるとわかっていたとしても」と、彼は書いている。

(海外ニュース翻訳情報局  加茂 史康)

 

この記事が気に入ったらシェアをお願いします。