【EU移民問題:実態分析】スウェーデンの移民街に軍が?移民問題を解決せず、移民に迎合

スウェーデンのロベーン首相は、犯罪が多発する移民街に軍を配備する可能性について言及したそうです。社会民主労働党党首の彼がこのような発言をするのは意外ですが、どうやら選挙対策の一環で出てきたものだそうです。中道左派と言われる首相が、移民に対して踏み込んだ対策を打ち出さなければ選挙に勝てないと考えるほど、不穏な空気が国内に漂っているということでしょうか。また筆者は、欧州指導者が移民対策に手をこまねいている間に、社会が変容を迫られている現状を厳しく批判しています。本記事は、ロシア・トゥデイからの紹介です。

Post 2018/01/25   10:34

RT 2018/01/23】

中道左派であるスウェーデンのステファン・ロベーン首相は、移民が多数を占める移民街での犯罪を減らすために軍隊を配備する可能性があると述べた。しかし、数十年にわたる移民の流入に、奇妙にも自らを合わせることが、真に問題に取り組んでいると言えるのであろうか。

ロベーンの先週の発言は、2017年に300件を超える発砲事件が起こったという統計を受けて述べられたものである。その大多数は、国内3大都市で起こっている。30年前、厳しい銃器所有取締法があるスウェーデンで、銃犯罪は新聞の第一面を飾るほど珍しいものであった。現在、メディアの見出しはほぼ毎日「縄張り争い」、「報復殺人」、そして「手りゅう弾を使った犯罪」であり、そのような事件が起こる貧困地域に目が向けられている。昨年の報告では、90パーセントを超える発砲事件の容疑者に移民の背景があったことが示された。

国際的な見出しとなってはいるが、(犯罪者を)軍用車両に送り込むという発言でロベーンが意図したことの真意は、割り引いて考えるべきである。元労働組合員であるロベーン首相のレトリックは、ずっと犯罪に厳しいものであった。また、彼の少数与党の政府は年内に行われる、再燃している中道政党および移民排斥主義政党との再選を巡る闘いに直面しているのである。

2017年11月にマククロンがスウェーデンを訪問時の、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とステファン・ロベーン首相。

しかし、この逸話は重要である。なぜならばこの話は、西側諸国の指導者がいかに移民とその結果として起こる国内テロに対処しているかを物語る教科書のようなものだからだ。この軍隊配備の提案とは、政府が何かやっているように、またはこれからやると言っているように見せかけなければならないとの考えから出たものであるが、あまりにもやりすぎて、漫画のようにマッチョなものとなっている。戦闘服を着た兵士たちが(スウェーデン南部の都市)マルメの無礼な少年たちの親元へ押しかけることが、長期的に有効な解決策だとロベーンが心から考えていない限り、このアイディアはまさに馬鹿げていて不誠実な、うわべだけのものでもある。他の欧州の中道派のように、ロベーンは右翼のレトリックで(有権者を)口説き落とそうとしているのだ。このアイディアは、最初にスウェーデン民主党(SD)が言い出したものであるが、脈絡がなく深い考えもないように思われる。

このように社会主義者のロベーンは、ガウライター(訳注:ナチスの役職のこと。大管区指導者の意。)でも二の足を踏むような方策をさりげなく検討していた。その一方で、実態は「ナチス」だと自党について以前語っていたスウェーデン民主党党首が、社会分析という見せかけの提案を行った。それがいかに粗野で人騒がせなものであろうと、これこそが「新しいスウェーデン―エキサイティングでダイナミックな、多文化パラダイス」に対する解決策だと皮肉にも宣言しているようなものだ。 

ライプツィヒ、ドイツのクリスマスマーケット/ロイター

 

ロベーンの移民街に対する統制戦略に対しては、今なお疑いもなく費用対効果の評価が行われているが、変容した現実に対し、似たような解決策が取られるというのはよくある話だ。柱やコンクリートのブロックが、欧州の観光地に導入されつつある。2017年11月まで、フランスは2年間にわたり非常事態宣言下にあり、そこで育った子供たちは、警察官とは防弾ベストを着て短機関銃で武装した人のことだと思うだろう。暴動から身を守ることができる仕様の警察署があり、そこでは警察官は襲撃されないように装甲車両の中に追いやられている。また、警察官がユダヤ教の礼拝所をの周りをパトロールしている。国費で賄われているテントの街や、戦場にあるようなキャンプがある。誰もが、ただ飛ぶだけの地獄のような飛行機の旅に不満をこぼすのをあきらめてしまった。

場所を問わず、妥協や一時しのぎで不完全な解決方法や、間違った適応しかないのだ。刻々と明らかになる状況に対して、常に一歩後退している。完全に非効率的なものもあり、以前のライフスタイルからどれも後退しているため、罪のない人への負担となっている。また、西側諸国の人々の生活に対する、似たような強制的な解決法は山のようにもっとある。そのような解決法は目に見えにくいものであるが、柱を歩いて通り抜けるよりもずっと不便なものである。

フランス警察はマルセイユのシナゴーグを守っている。/ロイター

 

20年前の西側では、このような光景はあり得ないことであったが、この新しい現実が素早く、そして疑問を持たれずに一歩ずつ受け入れられている。ロベーンの前任者であるオロフ・パルメは、現代の移民を歓迎するスウェーデンの姿勢を作り上げたが、彼は「社会は、いかに移民をうまく扱うかで成功を決める」と語っている。彼は、自身の退屈で均質なプロテスタント国がこのようになると予想していただろうか。そもそも、このような状況を彼は望んでいただろうか。自党の未来の党員たちが、彼が信奉したのと同じ理想の名において何を成すべきか、彼には分かっていたのだろうか。また、彼の国民たちが払わなければならない代償とは何であろうか。

これは、移民についての話ではない。難民も経済的な移民も、人権と正当な自己利益を有する。これは、西側の政治的な既成勢力についての話なのだ。既成勢力とは、ロベーンだけでなく、(ドイツ首相の)アンゲラ・メルケルや(フランス大統領の)エマニュエル・マクロン、(欧州委員会委員長の)ジャン=クロード・ユンケルや、(国連難民高等弁務官の)アントニオ・グテーレスも入っている。また、移民がもたらす影響や同化という価値、自分の社会が受け入れ可能な上限、そして未来について、公正かつ深い調査を行おうとしなかった、あるいは行う能力に欠けていたという話なのだ。欧州という家の中が、より調和的で繁栄した存在となるように青写真を描く代わりに、彼らはただ中身のない会話や家財で壁に空いた穴を塞ぎ、腐食が出てきたら色を塗ってごまかしたのである。

(海外ニュース翻訳情報局 渡辺 つぐみ)

この記事が気に入ったらシェアをお願いします。