【ミクロネシア:中国】ミクロネシア連邦が助成するCIAは、競合のPMAを廃業に追い込むのか?

「一帯一路」構想のもとに建設した港を、債務返済に窮したスリランカが中国に奪われたというニュースはまだ記憶に新しいですが、中国はまた別のやり方で小国を牛耳ろうとしているようです。グアム・パラオ・北マリアナ諸島で発行されているパシフィック・アイランド・タイムズに掲載されたこちらの記事は、一見ミクロネシア連邦への寛大な援助のように見えるこの中国の行為が、実は遠くない将来においてこの小国の生殺与奪を握りかねないものだと警告を発しています。

 Post 2018/01/23 21:12

Pacific Island Times by Joyce McClure 201/01/21

コロニア(ヤップ州)- ユナイテッド航空が1月初旬に廃止したヤップ‐パラオ間の航路をカロリン諸島航空(CIA)の小型機が引き継ぐという案内に続き、CIAはさらにウルシー環礁とファイス島行きの航路を新規で開始すると発表した。昨年11月に中国政府からミクロネシア連邦に寄付された新品の17人掛けターボプロップ機ハルビンY-12は、1月9日に始まったヤップ‐パラオ間の週2便のフライトに加えて、ヤップ島から遠く離れたこれらの2拠点に、この1月15日から就航する。CIAはまた、現地での滑走路の改修が終わり次第、ウォレアイ環礁への就航も検討している。

CIAのフライトは一週おきの月曜日にヤップ‐ウルシー‐ファイス‐ヤップのルートで就航。ヤップ国際空港でのチェックインは朝5時30分から6時30分の受付で、7時に出発する。運賃は以下のとおり:ヤップ‐ウルシーは60ドル、ヤップ‐ファイスは80ドル、ウルシー‐ファイスは40ドル(子供料金はそれぞれ半額)。貨物料金は1ポンド(0.45キロ)あたり0.6ドル。往復料金は片道料金の倍。子供料金は2歳から12歳に適用し、13歳以上は大人料金。2歳以下の幼児は無料。

CIAは“ほとんどの島へ、信頼できるフライトと、輸送、そしてプライベートのチャーター便をお届けすること”を目標としている。1月5日、在ミクロネシア中国大使リー・ジエ、外務省長官ローリン・ロバート、司法省長官ホゼ・ギャレン、ヤップ州知事トニー・ガンギヤンに加え、ヤップ政府高官や地元の首長たちがY-12でウルシーとファイスを訪れ、現地の住民の歓迎を受けた。大使は新年の挨拶を述べ、ウルシーとファイスの首長にそれぞれ1000ドルと500ドル相当の寄贈品を手渡した。翌6日には、Y-12機は若い患者に本島で治療を受けさせるために、遠くウォレアイ環礁まで飛んだ。

CIAはこれにより、ヤップ州の遠方に位置する島々へのフライトを受け持っているパシフィックミッション航空(PMA)と競合することになる。PMAはミクロネシア連邦において1974年以来、2機の9人掛け多発機をウルシーへ毎週月・木、ファイスへはおおよそ月2回のペースで、オンデマンドで就航している。

ヤップからパラオへ、そしてヤップ外洋の島々へのCIAの新しいフライト計画について、在ミクロネシア・アメリカ大使ロバート・ライリーはこう語った。「人々がヤップとパラオの間、そしてさらにヤップ州の遠くの島々への旅行を続けられることは喜ばしいことだ。ミクロネシアに長い歴史を持ち、地域社会に貢献してきたPMAもまた、外洋の島々への定期便を継続する。彼らは医療目的の搬送、チャーター便、捜索活動といった、ヤップの福祉と自立発展に欠かせないサービスを提供している」

PMAはこれまで、外洋の島々と州都をつなぐ重要な役割を負っていた。CIAと同様に、PMAもチャーター機を飛ばすことができるが、彼らはそれに加えて、海難捜査、ヤップからパラオへの医療目的の搬送、滑走路のない島々への医薬品の投下をそれぞれ燃料費だけで、また外洋の島々からヤップ島への医療目的の搬送は無料で請け負っている。彼らはまた、島々の人たちとヤップ島の銀行との間の仲介役をも務めている。生命にかかわるほどではなくても一刻も早く本島の医師の診断を受ける必要のある患者を、PMAは無料でヤップ島まで移送する。母親の付き添いが必要な小さな患者については、母親と子供の両方を無料で引き受けている。

非営利で使命感に基づいた組織であるPMAは、ミクロネシアとフィリピンの島々で、寄贈品と寄付金によって運営されている。彼らはまた同地域において、若者向けのプログラムや職業訓練を開催し、健全なリクレーション活動のための青少年センターの建設なども行ってきた。

合計で1000人にも満たない過疎地の島々に2つの航空会社が存在することについて、CIAの広報担当は「我々は物流を補完するために参入した」と語った。しかしながら、CIAの低運賃が両社間に競合をもたらすと、疑問を抱く人たちもいる。CIAの運賃は、過去8年間据え置かれてきたPMAのものよりも、片道あたり20ドル、1ポンドあたり0.1ドル、そしてチャーター便は200ドルも安いからだ。

最大の懸念点は、“遠く離れた島々に暮らす人たちの生活を向上させることを目標とした”PMAがもし競合に敗れた場合、CIAは運賃を釣り上げ、無料の医療目的の搬送サービスは無くなってしまうことだ。それはまさに、1990年代にポンペイでCIAがPMAを追い出した際に起こったことだ。そのとき、CIAは運賃を値上げし、無料の医療目的の搬送サービスは廃止され、燃料費だけで行われていた捜査活動も停止された。さらに悪いことに、ミクロネシア連邦政府はCIAに対して財政援助を始めなければならず、そしてその援助は今に至るまで続いている。

(海外ニュース翻訳情報局 浅岡 寧)

 

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