【米国・徹底分析】バノン退場でトランプ連合出現の可能性

スティーブ・バノン氏が去ったことで、共和党エスタブリッシュメントとトランプ支持者の間の分裂が解消される可能性があるという、政治コンサルタントのエド・ロジャーズ氏がワシントン・ポスト紙に寄稿したオピニオンです。結果的には、今年の中間選挙に対して共和党に有利に働くだろうと分析しています。本記事は、ワシントン・ポストから紹介します。

Post 2018/01/13  6:30

The Washington Post by Ed Rogers  2018/01/11 】

人生で大切なのは「グロス(総量、全体)」ではなく「ネット(正味)」だ。その点ではマイケル・ウォルフ氏の本、「炎と怒り(Fire and Fury)」はトランプ大統領にとってはネット(正味)でプラスとなる。具体的に言うと、本によって共和党でのスティーブン・K・バノン氏の昇り調子に終止符が打たれるのであれば、共和党連合が立ち上がる可能性がさらに膨らみ、それは2018年の中間選挙でもっと強力なものとなるだろう。またそれは大統領にとっても非常に良い結果になるだろう。今のところ、トランプ氏は決して与党連合を結成できているとは言えない。トランプ氏の集会参加者や熱狂的な支持者と、動揺した正規の共和党員や選挙運動を展開して選挙に勝つ必要のある議員とが一つにまとまったことはない。また、けんか腰のバノンがいては共和党のトランプ派と議会派が本当に一つになるのは不可能だった。

もう少し続けるのを我慢してほしいのだが、バノン氏が去った今、もしかしたらトランプ連合が立ち上がろうとしているのかもしれない。共和党が多数となって良い政策を作ることを望む従来の共和党支持者と、従来から共和党に投票していたものの上下院で多数を占めた共和党の実績に不満を持っていたトランプ支持者との間で、連携のようなものができるということだ。従来の共和党支持者は、当然ながら、トランプ氏のことを良い政策を法律化するために必要な道具としてみなしている。トランプ連合のもう片方は、現在の政治的秩序を壊したいと考えているものの運営計画を持っているとは言えない人たちだ。真のトランプ支持者は大統領が泥沼で身動きが取れなくなったり、同じことを繰り返す羽目になったりすることはないと信じている。すると伝統主義者が法案を署名させ、裁判官を確定させ、トランプマニアが自分たちの支持する男は自分たちのことを忘れていないと確信しているかぎり、その連合は存続できる。バノン氏がミッチ・マコーネル上院議長(共和党・ケンタッキー州)を打倒し、機能している他の共和党議員を負かしたいと願っていたために、トランプ連合は不可能だったのだ。

与党連合にバノン氏の居場所がないのと同様に、ジェフ・フレーク上院議員(共和党・アリゾナ州)のような人物もあまり役に立たない。フレーク氏は、反トランプの立場を取って大統領を個人的にけなし、トランプ氏の性格的な欠点を強調することで主流メディアの注目を集めて悦に入っている。トランプ氏は批判すべき材料に事欠かないが、党幹部がトランプ叩きを自身の主目的にしても、有権者が与えた責任を党が果たすことにはつながらない。バノン氏もフレーク氏も、やり方は違えども、連合結成や得票の見込みに貢献するのではなく、むしろ単にかき乱すだけの妨害ショーの演出家となってしまった。リンゼー・O・グラム上院議員(共和党・サウスカロライナ州)は、多少トランプ氏に同調するようになったように思える。他の者も留意すべきだ。

トランプ連合がどのように機能するかは既に分かった。トランプに投票した人々は大統領がエスタブリッシュメント(支配層・既成勢力)と現状維持の誘惑を受けることはないと信じており、共和党のエスタブリッシュメントは、トランプ氏の個人的な判断と政策的立場が自分たちの思い描くことのできないほど保守的であることが分かった。共和党エスタブリッシュメントにとってトランプ氏の問題点は、その個人的行動、世界秩序を維持する上で大統領として取るべき役割の軽視、知識のギャップと従来の同盟国に対する無関心だ。その未熟さが多くの投票者を不安にさせ、投票権を奪うことになる。そうでなければ、特に経済分野での政策の成功は投票の理由となるものなのだが。こういう人たちが、バノン氏が去って喜んでいる有権者なのだ。

ともかくトランプ氏は留まっている。民主党とそのマスコミの協力者が何を望もうとも、大統領の座を降ろされることはないだろう。またその行動は釈明できないものだが、そのせいで大統領を中心に形成されようとする連合を止めるべきではない。バノン氏のせいでトランプ氏の行動が悪かったわけではないし、彼が去ったことでトランプ氏がもっと落ち着いて成熟し、あるいは思慮深くなると考える理由は見当たらない。すると問題は、連合が、有権者が大統領の欠点に目をつぶるだけの結果を生むか否かだけでなく、民主党が大統領の力を弱め、その不利な行動をなんとかしてチェックすることのできる候補者を立てるか否かだということになる。

普通の共和党有権者は、バノン氏の引き起こした騒動は民主党と主流メディアの役に立っただけだと知っている。というのは、民主党と主流メディアはトランプ氏の政策に抵抗することを求め、トランプ氏の個人的に不十分な点で頭がいっぱいだからだ。だが、バノン氏の有害な存在とフレーク氏のような腰抜けの存在もそうだが、大統領の短所にもかかわらず、トランプ氏の大統領としての地位は、新たな連合のどちらの側にとっても正味ではプラスとなる。それはいつでも変わる可能性があり、国外で失敗した場合や、判断ミスによって戦争がおきた場合には特にそうだ。しかし災難が起きなければ、誰にも分からないことだが、もしかしたらトランプ復興のようなものが起こるかもしれない。型にはまった知識で、ありきたりのメディアとその他の人々は、トランプは最悪な事態を引き起こすという考えを推進することに莫大な投資をしたが、最悪な事態など起こらなかったらどうだろうか?経済が本当に刺激を受け、国外での大惨事もなく、モラー氏が大きな注目を集めるような結果を出すこともなく、テロ攻撃もないとしたら?それは民主党とそのメディアの仲間にとっての最悪の事態となるだろう。

今のところ共和党連合には実際の具体的結果を出すことに集中する指導者が必要だ。どのような結果かと言えば、有権者がそれに注目し、その結果として2018年中間選挙で変化を起こすのが妥当で民主党のほうがもっと良い結果を出すと考えないように、有権者を傾かせる結果だ。

執筆者:エド・ロジャーズ( Ed Rogers)
PostPartisan ブログ(ワシントンポスト)の寄稿者。ロナルド・レーガンとジョージ・H・W・ブッシュのホワイトハウスおよび様々な全国規模の選挙運動での経験を持つ政治コンサルタント。元ミシシッピ州知事のヘイリー・バーバー氏と共同で1991年に設立した、ロビー活動とPRの会社であるBGRグループの会長である。

 

(海外ニュース翻訳情報局 竹林 浩)

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