【米国・分析】共産主義の罪を誤魔化し続けるニューヨーク・タイムズ

アメリカで100万部以上の発行部数を誇るニューヨーク・タイムズは、ワシントン・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルと並んでアメリカを代表する高級紙とされています。

そのリベラルな論調でも有名で、日本では朝日新聞と提携しており、東京支局を朝日新聞東京本社ビル内に設けていることをご存知の方も多いでしょう。ライバル紙であるワシントン・ポストに掲載されたこちらのオピニオン記事を読むと、そのアメリカを代表するリベラル紙が共産主義に関してどのような考え方を持っているかがよくわかります。

同じくリベラルで知られる、ニューヨーク・タイムズの日本の提携先がこの点についてどのような考え方を持っているかは興味深いですね。

Post 2017/12/06  21:12  update 17:22

The Washington Post by  Marc A. Thiessen 2017/11/10】

11月7日、モスクワ中心街で1917年のボリシェビキ革命100周年を記念して旗やウラジミール・レーニンの肖像を掲げて行進するデモ隊

トランプ政権は今週のボリシェビキ革命100周年(訳注:11月7日)を、共産主義による被害者の記念日と名付けた。同じ日をニューヨーク・タイムズは、共産主義の美点を褒めたたえる一連の記事によって、別のやり方で記念した。

その一連の記事のタイトル「赤い世紀」に込められた皮肉は、タイムズの編集者には効いていないようだ。20世紀は確かに真っ赤だった。共産主義の犠牲者の血で染められた世紀という意味において。『共産主義黒書(The Black Book of Communism)』に掲載された死者の数には呆然とさせられる。ソビエト連邦ではほぼ2000万人が殺された。中国では6500万人、ベトナムで100万人、カンボジアで200万人、東欧で100万人、アフリカで170万人、アフガニスタンで150万人、北朝鮮で200万人(現在継続中)。合計で、共産政権はおよそ1億人を殺し続けてきた。それはナチスによって殺された人数の4倍にあたり、共産主義こそが人類史上もっとも残忍なイデオロギーと言えよう。

にもかかわらず、ペンシルベニア大学教授のクリステン・R・ゴドシーは“共産主義者はより良いセックスをする”という記事を書いている。「東独の女性は西独の女性と比較して倍のオルガズムを経験していた。西独の女性は、トイレットペーパーの配給の列に並ばなければならなかった女性よりも、セックスの回数も、満足のいくセックスの回数も少なかった」。彼女はスターリンについて厳しいことも書いている「彼は、堕胎を禁じたり、核家族化を推し進めたりして、ソ連が持っていた進歩的な女性の権利を廃止したから」。そう、彼女にとってはそれらがスターリンの罪なのだ。粛清でもグラグ(強制労働収容所)でもなく、核家族化の推進が。

“中国の共産革命の下で女性はどうやって暮らしたか?”という記事で、記者のヘレン・ガオは「新たに集団農場化された地方から来た楽しげな農民」と語り合った彼女の祖母の思い出を綴る。そして「欠点もあったけれど、共産革命は中国の女性に大きな夢を持つことを教えてくれた」と書く。毛沢東の革命は数千万の中国人を殺害した。残酷な“一人っ子政策”によって、生まれてすぐ殺されることになった何百万人もの女の子を数に入れずに、だ。彼女たちは、夢を持つ機会すら与えてもらえなかった。

“レーニンのエコ戦士達”という記事で、イェール大学講師のフレッド・ストレベイは、レーニンが「長年にわたる熱心なハイキングやキャンプの愛好家」で、ロシアを「環境保護の世界的な先駆者」にしたと書く。レーニンはまた、彼の前の皇帝たちが一世紀にわたって処刑したよりも多い数の政敵を、就任最初のわずか4か月で処刑した大量殺人者だということを、ストレベイは書き忘れたようだ。『共産主義黒書』に掲載されているレーニンからチェーカー(KGBの前身の秘密警察)に宛てた電報にはこう書いてある「少なくとも100人のクラーク(自営農家)、金持ちども、それから有名な高利貸しを絞首刑にしろ。人民がよく見られるように、大っぴらに吊るすのだ」(その電報は「タフな奴らを選べ 」という不気味な追伸で締めくくられている)。きっとその電報を打ったとき、彼はキャンプをしていたに違いない。

カリフォルニア大学バークレー校のユーリ・スレツキンは“如何にしてボリシェビキのように育てるか”という記事でこう説明する「家庭では、ボリシェビキの子供たちは、黄金時代のロシアに匹敵するものと強調された“世界文学の宝”と名付けられた書物を読む。ソ連の人々はダンテやシェークスピアやセルバンテスから学ぶことを期待されていた」。オーウェルからも学ぶことを期待されていたかどうかには、スレツキンは触れていない。また別の“ボリシェビキの愛すべき生活”という記事では、彼は「ロシアの共産主義者にとって、革命は愛とは不可分だ」と述べている。もちろんそれは、KGBが真夜中に押し掛けて、彼らの愛しい人を引き離してグラグに連行する時を除いて、の話だ。

全ての記事がここまで酷くないにせよ、一連の記事はさらに続く。ヴィヴィアン・ゴーニックは“共産主義がアメリカの人々を鼓舞した時”について書き、パラーシュ・クリシュナ・メロトラは「ソビエト文学展示会がどれほど彼の住むインドの町に活気をもたらしたか」について書き、またジョン・T・サイデルは「失われたイスラム共産主義の将来」について嘆いている

これらニューヨーク・タイムズの一連の記事の論調は、前モスクワ支局長ウォルター・デュランティーからの伝統に基づいている。彼はスターリンの支配についての情熱的な報告書をいくつも書き、その中にはウクライナにおけるスターリンの計画的な飢饉による大量の餓死者を繰り返し否定しているものもある。「今日におけるロシアの飢饉に関するあらゆる報告書は、誇張されているか、もしくは悪意のあるプロパガンダだ」と彼は書くが、実際に数百万人が餓死している。彼によると「玉子を割らずにオムレツを作ることはできない」そうだ。

今、一世紀にわたる虐殺を経て、ニューヨーク・タイムズは同じところに戻ってきた。共産主義を高貴な主義と描写し、その名のもとに行われた殺人は単なる一時的な逸脱に過ぎないとしている。共産主義が試され、テロや粛清や大量虐殺や飢餓や全体主義の悲劇が起こらなかった国はひとつとしてないということは気にしていない。上に挙げたオピニオン記事のどれでも、「共産主義者」という単語を「ナチス」に置き換えてみれば、どの媒体であろうと掲載するだろう。おそらく、デイリー・ストーマー(訳注:白人至上主義者サイト)を除いて。

残念なことに、共産主義に対するこのねじれた見方は、次の世代に受け継がれている。共産主義の犠牲者記念財団による最近の調査によれば、アメリカのミレニアル世代(訳注:2000年代に成人する世代)のわずか36パーセントが共産主義に対して「とても好ましくない」との見方をしている。全体のうちこの世代だけが、過半数に満たないパーセンテージだ。さらに悪いことに、ヨシフ・スターリン時代よりもジョージ・W・ブッシュの下で多くの人が殺されたと、32パーセントが信じている。この無知は驚くべきことだ。冷戦後の最初の世代は、共産主義の悪についてほとんど全くと言っていいほど知らされずに育っている。(関連記事

チェコの作家ミラン・クンデラはかつて共産主義との闘いを「記憶の忘却との闘い」と表現した。共産政権は彼らの犠牲者を殺すよりもさらに酷いことをした。それは、彼らの記憶と人間性を消そうとしたことだ。恥ずべきことに、記憶と人間性に対する共産主義者の罪は、いまだにニューヨーク・タイムズによって繕い続けられている。

執筆者:
マルク・A・ティッセン (Marc A. Thiessen)
ワシントンポストに週に2回コラムを執筆。アメリカ企業研究所(American Enterprise Institute)の研究員であり、元ジョージWブッシュ大統領のスピーチライターだった。

(海外ニュース翻訳情報局 浅岡寧)

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