【日米問題・国防】日本の問題は、戦争を推し進める行為ではなく、牙を抜かれた軍隊にある。

トランプ大統領は、来日に際し、インタビューで、「もし中国が北朝鮮の現状を許し続けるのなら、サムライの国が復活し、日本との間に大きな問題が生じるだろう」と、中国に警告を発しました。日本の軍国主義化の懸念を引き起こす発言として注目を集めましたが、そのようなことよりも、懸念すべきは、自衛隊の組織そのものであると、記事では指摘し、自衛隊の改革の重要性を示唆しています。この記事は、ワシントンポストから紹介いたします。
Post 2017/11/23  16:22

The Washington Post     2017/11/20】

今月、トランプ大統領は、北朝鮮の核開発と核ミサイル計画に対し、中国がこれ以上傍観しているなら、日本の再軍備化が現実のものになると、中国を脅迫するような発言をした。トランプ氏は、日本を「サムライの国」と呼び、「もし中国が北朝鮮の現状を許し続けるのなら、日本との間に大きな問題が生じるだろう」と、インタビューで中国に警告を発した。

しかし、日本人は新たに出現しようとする「サムライ」なのか?災いをもたらす軍国主義が、再び「日出づる国(日本)」に出現しようとしているのか?双方の質問に対する答えは、否である。自衛隊を、普通の軍隊に少しでも近づけようとする動きは、日本でも起きてはいるが、日本が「サムライの国」に戻るだろうという考えは、ばかげている。実際、日本が自国防衛を自らできるようになるためには、解決されなければならない課題が山ほど残っている。

グラント・ニューシャム氏は、自衛隊改革への道のりで最大の問題は、日本は、アメリカに異常なくらい安全保障で依存していることであると述べている。元海兵隊大佐で、自衛隊への連絡将校として任務についた経験があるニューシャム氏は分かっている。「日本人はこんなことを言うのが好きである。『アメリカが槍なら、我々は盾である。』」ニューシャム氏は言う、「実際の戦闘では、槍は血を浴びるが盾は浴びない。日本人の代わりに死ぬことを期待されているのはアメリカ人である。」

日本の総理大臣、安倍晋三氏は自国防衛に関し、日本がより多くの責任を負う政策を進めている。2015年、彼は自衛隊が、同盟国援助ができるよう一連の法案を通した。それまでは、日本はアメリカによって守られているが、日本がアメリカのために戦うことはできなかった。

安倍氏は今、日本の平和憲法の改正に取り組もうとしている。それは、一部心配性な人たちが言うような、日本の軍隊が他国を攻撃できるようにするためではなく、むしろ自衛隊の存在に、法的正当性を与えるためである。戦争放棄、そして武力の保持を禁じている憲法9条の条項のほとんどは、変わらない。しかし、この程度の改正にも、国会議員の3分の2の賛成が必要なので、安倍氏がこの改正をできるかどうかは分からない。

たとえ、彼がそれをできたとしても、日本の自衛隊には、早急な改革が必要である。現在、陸海空自衛隊は、かろうじて共同作戦が遂行できる程度である。むしろ、反目してあっている領国のようである。彼らはお互い連絡を取り合う無線すらない。トランプ氏が日本に来た時、アメリカから沢山の軍事装備品を買うよう迫った。しかし、ニューシャム氏は指摘する。「日本は、欲しいだけF35戦闘機を買うことができるが、すべての軍組織が、自分たちが欲しいものを購入したら、何も出来ないのと同じことである。」

ニューシャム氏は、日本の自衛隊が、海陸での共同オペレーション能力を高めるために尽力してきた。特に、海上自衛隊の任務に対する、陸上自衛隊による背後支援である。今のところ、結果は出ていない。実際、海陸での共同任務能力不足は、2011年の東日本大震災の時、複雑に入り組んだ海岸からの被害者救出を妨げた。「海自の船は、海上では機能するが、上陸して人々を救うことは不可能だった。」と、ニューシャム氏は思い返していた。

自衛隊が共同作戦を執れないことは、アメリカとの軍事同盟にも悪影響を及ぼす。例外は、海上自衛隊である。海自とアメリカ海軍は、ミサイル防衛に関して日米共同作戦ができるくらいまで、親密な関係を築き上げてきた。しかし、それは必要に駆られて出来上がった関係である。ニューシャム氏は思い出す、東日本大震災の後、アメリカ海兵隊が人道支援のため、震災地域に入った時、そこにいた陸上自衛隊の部隊は、それが誰かがわからなかった。

結局、日本では、強い軍隊への政治的支持は皆無である。何年もの間、日本のメディアは、自衛隊を揶揄的に捉えてきた。60年代のゴジラ映画では、日本の軍隊は、ゴジラに追われていつも逃げ回る、何もできない野人のように描かれていた。総志願制の自衛隊への入隊者は、いまだに見下され、そして新入隊兵たちの給与は安い。急速な高齢化社会も、入隊者数減少の要因になっている。入隊資格である18歳から26歳までの人口は、2016年の防衛白書によると、1994年から40%減少している。

何年もの間、男女問わず日本の政治家が、自衛隊の改革を訴えると、軍国主義者、ファシスト、第二次世界大戦での日本の戦争犯罪を否定する者として、非難の対象となった。この傾向は以前より弱くなったが、日本の有権者たちは、依然として、自国を守るためにより多くの人的経済的資源を投じることには、及び腰である。現在の日本の防衛予算は48億ドルであるが、安倍首相はGDPの1%を超える予算獲得のため努力を続けている。しかし、NATO加盟国のGDP2%という目標をかなり下回る。

もし日本が、平和な穏やかな地域に位置していれば、防衛力強化は何の懸念も引き起こさない。しかし、北東アジアは、地球上でもっとも危険な隣人たちがいる地域の一つである。北朝鮮は、日常的に日本の領空でミサイルを飛ばし、日本の領海に落としている。軍組織と兵器の近代化に向けて野心的な改革真っ只中の中国は、日本の領土への領有権を主張し、日常的に、日本の領空と海上交通輸送路への侵入を続けている。

1952年に締結された日米同盟は、1648年ウェストファリア条約以降、2つの大国間で結ばれたいかなる同盟よりも、長く続いている。過去20年、アメリカの政権は、引き続きそのことを喧伝してきた。トランプ大統領も同様である。「日本とこれ程までに緊密な関係にアメリカがなったことはない」と、東京訪問中、トランプ氏は発言した。しかし、アジアで軍事的緊張が高まることで、日本は、自国そしてアメリカの友人たちのため、よりその役割を果たす必要があるだろう。

執筆者について
ジョン・ポムフレット:元ワシントンポスト北京支局長で、『The Beautiful Country and the Middle Kingdom: America and China, 1776 to the Present』の著者である。

トップ写真説明:左から、駐日アメリカ大使ウィリアム・F・ハガティ、アメリカ海軍太平洋軍総司令官ハリー・ハリス大将、防衛省統合幕僚監部総務部長・髙島辰彦海将補。先週、東京の首相官邸に入るところ。写真提供はAP通信部長

(海外ニュース翻訳情報局 YY)

 

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