【テクノロジー】徐々にバラバラに分散化、アカデミックTwitter

By Mariko Kabashima

イーロン・マスクのTwitter買収によって毎日変化があります。
マスク氏のツイートだけをみると、さもTwitterが同氏によって素晴らしいものになっているように錯覚しますが、実際のところは、多くの研究者達や専門家達がTwitterから実質的に去っていきました。
このことについて、アカデミック界隈では現在どうなのか、今後の予想についての記事をInside Higher Edからご紹介します。
Inside Higher Edは、高等教育に関する世界で最も権威のあるデータ、分析、情報源という50年の歴史があるTimes Higher Education の所有のサイトです。


《引用記事Inside Higher Ed 

Twitterが急速に衰退する運命なのか、ゆっくりと衰退する運命なのか、まったく衰退しない運命なのかはまだ分からない。しかし、一部の学術界は待っているわけではなく、Mastodonや他のプラットフォームに向かっている。

今のところ、Twitterは持ちこたえている。

10月28日、イーロン・マスクは 「鳥は解放された」 とツイートし、後にソーシャルメディアをカオス的な買収となるであろうことを示唆した。その直後、彼はセキュリティに集中していた多くの社員を含む、大量の社員を解雇した。
彼は、それまで無料で本物であることを示唆していたブルーチェックのバッジを収益化した。また、脅迫や偽情報の拡散を理由に禁止されていたアカウントを復活させる計画も発表した。注目すべきは、ドナルド・トランプ前大統領のアカウントが、「暴力の賛美」 ポリシーに違反するツイートでBANされていたが復活させたことである。

一部の高等教育機関の中には、Twitterアカウントを削除した人もいる。アカウントを非公開に設定している人もいる。公開されたままだが、投稿を停止した人もいる。中には、フォロワーに別のソーシャルメディアプラットフォームへの参加を促すためだけに投稿する人もいる。Just-In-Caseオプションの代替案に加わった企業もある。また、ラーニングカーブで代替サイトに全面的に参加している人もいる。

Twitterに残っている人が投稿する場合、多くはそれほど頻繁ではなく、自分の投稿が信頼できるフォロワーを引き付けていないことに気づくことが多い。

マンチェスター大学マンチェスター教育研究所のMA Digital Technologies, Communications and Educationプログラムディレクターのマーク・キャリガン博士は、 「これまで当たり前だと思っていたネットワークが徐々に空洞化している」 と述べている。キャリガン博士は、マスクの就任後にTwitterを去った人物の一人である。

ウォッシュバーン大学のマシュー・ナイキスト准教授 (マスメディア・映画・ビデオ) は、マスク氏の買収後もツイート行動を大きく変えることはなかった。にもかかわらず、11月13日、彼のアカウントが他の人の投稿に 「いいね」 を付けたりリツイートしたりする機能が制限されていることを示すポップアップメッセージを受け取った。

「私が行ったことの中で唯一関連性があると思われるのは、イーロンのTwitterでの悲惨な在任期間を示すツイートのいくつかに『いいね!』を押したことです。独裁的な体制なやソフトウェアでは、言論の自由は決して勝てない」とツイートしていた。ナイキスト氏のフォロワー数は約2,900人。Twitterは、ナイキストの制限されたアカウントについてのコメントを求めたが、回答は得られなかった。

ナイキスト氏はInside Higher Edにこう語っている。
「私のようなアカウントが、 (プラットフォーム上での) Nワード*の使用が500%ほど上昇したときに、マスクを批判する2、3のツイートに”いいね”しただけで、制限されてしまうなんて本当に驚いた」
その後、「いいね!」やリツイートの機能が回復したナイキスト氏は、映画のコミュニティのためにTwitterに留まりたいと考えている。しかし、彼は代替案としてMastodon(マストドン)とHiveに参加している。

訳注*  Nワード :英語圏で公の場で使う事がはばかられている黒人に対する差別表現と見なされる「nigger」などを暗喩する「N」で始まる英語表現の総称のことを意味する表現。

マスクがCEOに就任して以来、多くの学者がマストドン (100万人以上のアクティブユーザーを獲得した分散型オープンソースのソーシャルネットワーク) に引きつけられた。「分散型」 とは、ネットワークが1つだけではなく、ウェブサイトの集合体であることを意味する。新規ユーザーは、マストドンへの登録にラーニングカーブがあると報告している。まず、インスタンス(本拠地となるサーバー)を見つけて参加しなければならない。1万以上のインスタンスがあり、すべてのインスタンスが新しいメンバーを受け入れるわけではなく、またすべてのインスタンスがすべての人を受け入れるわけでもないので、これは少し厄介な場合がある。

ユーザーがマストドン・インスタンスを見つけて参加すると、ネットワークを介して他のユーザと関わることができる。多くの学者は、最終的にマストドンのラーニングカーブは克服可能であると報告している。しかし、Twitterに影響された彼らの考え方を、ソーシャルメディアプラットフォームを構成するものに合わせるのは難しい。

「マストドンについて聞かれることがある」
コロラド大学ボルダー校の情報科学准教授であるケイシー・フィースラー博士は、ネット上のプラットフォームの移行について研究している。
「ソーシャルメディア・ネットワークが1つのプラットフォームではなく、誰かに所有されているわけでもないという考え方は,これまでの経験とはまったく異なるものです」

フィースラー博士はツイッターを続けているが、マストドンでより多くの時間を費やしている。マストドンは他の学者と交流するのに “特に良い空間 “で、学者以外の人と関わるには “予想以上に良い場所 “だという。
驚いたことに、マストドンのエンゲージメント率はツイッターよりはるかに高い。たとえば、彼女は最近、同じものを両方のプラットフォームに投稿した。ツイッターのフォロワーがマストドンの4倍もいるのに、反応の数はほぼ同じだった。

さらに複雑なことに、マストドンだけが代替案というわけでもない。「研究者のなかには、同業者のコミュニティを再構築したり、自分の教育や研究について一般の人と関わりたいと考えてHiveに参加している人もいる」とフィーズラー博士。Hiveソーシャルには、この1ヵ月で新しいユーザーが殺到した
フィーズラー氏によると、Hiveに参加するユーザーは、参加前にサーバーを特定する必要はないとフは言うが、多くの人は、間違ったハイブ・サイトに参加するなど、別のトラブルを抱えているという。

フィーズラー博士は 「すべてが急速に進んでいる」 と述べ、プラットフォームとしてのTwitterが消滅する可能性はゼロではないと推測した。
「その確率がどれだけ大きいかはわからないが、ゼロではない」

その意味で、Twitterが消滅の可能性があると噂されているにもかかわらず持ちこたえられたことも問題の一端であるように思われる。つまり、そのソーシャルメディアサイトが内部崩壊を回避している限り、ユーザーは 「留まることを約束する」 から 「去ることを約束する」 までのその間に存在しえるあらゆるレベルのエンゲージメント (例えば、片足の指をTwitterの浸しながら、他の選択肢を模索するなど) も含む連続体に沿って落ち込む可能性がある。

その結果、Twitterからのアカデミック界隈の移行は徐々に分散している。

「高等教育におけるTwitter後のソーシャルネットワーキングへの移行が完全に個別化された問題のままであれば、アカデミック界隈のTwitterを通じて形成されたネットワークを改革することは不可能ではないにしても困難であろう。」とキャリガン博士は語った。

「心配なのは、Twitterのカジュアルなユーザーがマストドンに移行して、それが直接の代替になると期待することです」とキャリガン博士は言う。
「その中には、実際に使ってみて、アーキテクチャやエンドユーザー体験がいかに違うかを知り、特に自分の興味に合わせることができなかった場合は、興味を失うかもしれません」

MITテクノロジーレビューによると、Twitterはマスク氏が就任して以来、100万人以上のユーザーを失った可能性があるという。しかし、フィースラー博士によれば、エンゲージメントの低下を追跡した数字は過小評価である可能性があるという。

「アカウントを停止せずに退会する人が多いのには、それなりの理由がある」とフィーズラー博士は述べ、研究仲間の行動の変化の多くを観察してきたと指摘した。
「アカウントを削除しないようにというアドバイスは非常に良いものです。削除すると誰かがあなたになりすますことができるようになりますので。」

詳しくはこちらの原文記事を御覧ください。


マストドン内 のアカデミック アカウントを専門分野ごとに精選したリストはこちらから。
ご興味のある方はどうぞご覧ください。

(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子 文・翻訳)

【編集後記】

私も拠点をマストドンに移してからこの記事に書かれていることを実感します。
個人的にマストドンのお陰で、私でも世界的著名なエンジニアや学者の方々と会話できたり、興味深い投稿を翻訳して記事にしてもよいと許可をいただいたりなど、Twitterではおよそあり得ないほどの質のよい会話ができ、色々な情報を得られたり、勉強になったりします。
今のところツイッターをやめても全くの不便さは感じません。
また、ツイッターへの投稿をやめ、マストドンに告知しはじめてから記事へのアクセスは大幅に増加しました。
つまり、記事をみてくれる人が増えました。
本当に当サイトの記事を見たい人は、ツイッターにはいなかったということなのでしょうか。非常に興味深いです。

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